はじめての人に自己紹介をするとき、
気がつくと、できないことのほうから話していませんか?
パソコンが苦手で。
人前だと緊張してしまって。
体力もあまりなくて。
言い終わってから、なんだかこころがしぼんでいる。
そんなあなたへ。
だいじょうぶ、あなただけじゃないですからね。
できないことリストは、放っておいても長くなる
ふしぎなもので、できないことって、いくらでも思い出せるんですよね。
ぼくは、これには理由があると思っています。
できないことは、失敗したときに、痛みといっしょに記録されます。
だから、忘れられない。ふとした瞬間に、勝手に再生される。
いっぽう、できることは、うまくいったときに、なにごともなく通りすぎていきます。
痛くないから、記録が残らない。
つまり、2つのリストの長さのちがいは、能力のちがいではなくて、記録のされ方のちがいなんです。
あなたのできることリストが白紙なのは、なにもできないからではありません。
できたことが、痛くなかっただけです。
得意なことは、自分ではまず見つけられません
もうひとつ、やっかいなことがあります。
得意なことって、本人にとっては「ふつう」なんですよね。
苦もなくできてしまうから、できていることに気づけない。
だから、できることリストは、自分ひとりでは書けないんです。
たいてい、横で見ているだれかが、先に見つけてくれます。
ぼくのリストが、一行も残らなかった時期
はずかしい話をします。
起業していたころのぼくは、できることリストが長いつもりでいました。
ただ、いま思えば、そこに書いてあったのはぜんぶ、数字で語れることだけでした。
それを失ったとき、リストは一行も残りませんでした。
アディクションにのみこまれて、部屋から出られなくなって、何年もうずくまっていたころ。
ぼくは自分のことを、「なにもできない人間」という一枚のラベルで呼んでいました。
そこから出るきっかけになったのは、大きな成功ではありません。
ぼくがなんとも思っていなかった、ほんの小さなふるまいについて、ある人が「それ、ちゃんとできてるよ」と言ってくれたことでした。
ぼくにとっては、あたりまえすぎることでした。
できることに数えたこともなかった。
でも、その一言で、白紙のリストに一行目が書かれたんです。
そして、これはやってみるとわかるのですが、一行目が書かれると、ふしぎと二行目が書けます。
「見つかる瞬間」に、ぼくは何度も立ち会っています
いまぼくは、障害のある人たちが働く場所に関わっています。
そこでいちばんうれしいのは、その人の得意が見つかる瞬間です。
同じリズムで、ずっと手を動かしていられる人。
ちいさなちがいに、まっさきに気づく人。
だれかの機嫌の変化を、部屋に入った瞬間に察してしまう人。
色の組み合わせを、迷わず決められる人。
どれも、履歴書には書きにくいことばかりです。
そして本人は、たいてい得意だと思っていません。「ふつうにやってるだけです」と言う。
でも、横から見ている人には、はっきり見えるんです。
だからぼくの仕事は、半分くらいが、見つけることと、伝えることでできています。
9月は、障害者雇用支援月間なのだそうです。
ぼくは、この月になにかを声高に言いたいわけではありません。
ただ、こういう場所を増やしていきたいと思っています。
できないことの確認から始まるのではなく、できることの発見から始まる場所。
「なにができませんか」ではなく、「なにをしているときが、いちばんラクですか」から入る場所。
それは福祉の話に見えて、じつはぜんぶの人の話だと思っています。
できないことリストばかり長くなってしまったあなたにも、まったく同じことを言いたいから。
こういう場所のことを、ここでひらいています。
気になった方は、そっとのぞいてみてください。
ライフアートラボ https://corp.lifeartlab.com/
「得意」という言葉を、使わないのがコツです
さて、ここから実践です。
できることリストを書こうとして手が止まる人は、たいてい「得意なこと」を書こうとしています。
得意、という言葉はハードルが高いんですよね。
人と比べる匂いがする。だれかより上でないと、書いてはいけない気がしてしまう。
なので、こう聞きかえてみてください。
「苦もなくできてしまうことは、なんだろう」
うまいかどうかは関係ありません。
しんどくなかったかどうか。それだけです。
今日の3分ワーク
① 今日一日をふりかえって、「苦もなくできたこと」を3つ書き出す。
ちいさくていいです。人の話を最後まで聞いた。洗い物をためなかった。道をゆずった。返事をすぐ返した。
うまくできたかは問いません。しんどくなかったかどうかだけで選びます。
② その3つのうち、ひとつを身近な人に聞いてみる。
「これって、ふつうですよね?」と。
③ 相手が「え、それふつうじゃないよ」と言ったら、その一行に丸をつける。
それが、あなたのできることリストの一行目です。
これは、自慢の練習ではありません。
むしろ引き算です。できないことばかりを両手で抱えて歩くのを、ひとつだけやめてみる。つみへらしです。
さいごに
できないことは、これからも増えていきます。
歳をかさねれば、なおさらです。
それでいいと思っています。ぼくも、年々増えています。
ただ、その横に、できることリストも置いておいてほしいんです。
短くていい。一行でいい。
一行あるだけで、人はけっこう歩けます。
ぼくが、そうだったので。
焦らず、比べず、背伸びせず。
今日の一行を、今日のうちに。
