9月になった。
ただ、それだけのことなのに。
なんだか急かされている気がすること、ありませんか?
きのうと今日で、なにが変わったわけでもない。
やることも、体調も、たいして変わっていない。
なのに、月の数字がひとつ増えただけで、胸のあたりがざわっとする。
そんなあなたへ。
だいじょうぶ、あなただけじゃないですからね。
急かしているのは、時間ではなく「線」のほう
9月に入ったとたん、どこからともなく声が聞こえてきます。
今年もあと4ヶ月。
下半期がはじまった。
年始に決めたあれは、どうなったんだっけ。
区切りがあると、人は数えはじめます。
そして数えはじめると、そのまま採点がはじまる。
でも、ちょっと立ちどまって考えてみると、9月1日という日は、どこかでだれかが決めた線でしかありません。
月も、期も、年度も、ぜんぶ人がひいた線です。
線があったほうが暮らしやすいから、ひいた。それだけのこと。
自然のほうは、そんな線を知りません。
虫の鳴き方も、日の落ちる時間も、8月31日と9月1日でパチンと切りかわったりしない。
すこしずつ、ずっと変わりつづけているだけです。
ぼくは、線で自分を追い立てていました
かつてのぼくは、この線が大好きでした。
起業していたころは、月末、四半期、年度と、こまかく区切って、そのたびに自分を採点していました。
数字が届けば、自分は生きていていい。届かなければ、自分はダメだ。
いま書きながら、ずいぶん乱暴なことをしていたなと思います。
でも、当時のぼくはそれを「意識が高い」と呼んでいました。
そして、線に追われて走りつづけて、崩れました。
アディクションにのみこまれて、部屋から出られなくなって、そこから何年も、社会のはしっこにいました。
その数年間、ぼくのカレンダーは、意味を失いました。
今日が何日なのか、何曜日なのか、わからない日がふつうにあった。
最初は、それがこわかったんです。
時間から降ろされてしまった気がして。
でも、そこでひとつだけ、はっきり気づいたことがあります。
線がなくなっても、時間はちゃんと流れていました。
日は昇って、落ちて、また昇る。
なにも壊れなかった。
ぼくを急かしていたのは、時間ではなくて、ぼくが握りしめていた線のほうだったんです。
線を、ぜんぶ捨てなくていい
誤解のないように書いておきますね。
「目標なんていらない」と言いたいわけではありません。
区切りは便利です。線があるから動ける日も、ちゃんとあります。
ぼくが手放したほうがいいと思っているのは、線そのものではなくて、線にくっついてくる「採点」のほうです。
9月になった、は事実です。
9月になったのに、まだなにもできていない、は採点です。
このふたつは、ひとつづきの文章みたいに聞こえるのに、まったくべつのものなんですよね。
胸のざわつきの正体は、たいてい後ろのほうです。
事実は、人をざわつかせません。
やっかいなのは、この採点が、こころのなかで一瞬で終わってしまうことです。
「9月か」と思った、その0.5秒のあいだに、もう終わっている。だから、採点したという自覚すらない。
残るのは、理由のわからないざわざわだけ。
なにが起きたかわからないから、手の打ちようもない。
だからまず、順番をゆっくりほどいてあげてください。
月がかわった。それを見た。ぼくは採点した。だから、ざわついた。
そこまで見えると、ざわざわは「わけのわからないもの」から、「ただの採点」に変わります。
正体がわかったものは、ふしぎと、すこし軽くなるんですよね。
「あと4ヶ月」を、数えない
「あと4ヶ月しかない」と「これから4ヶ月もある」は、同じ長さです。
前向きに数えなおしましょう、という話をよく見かけます。
でもぼくは、どちらの数え方もしなくていいと思っています。
数えたとたん、こころは未来へ行ってしまうから。
こころが未来にいるあいだも、あなたのからだは、ずっと今日にいます。
こころだけ先へ行くと、その距離のぶんだけ、しんどくなる。
グルグルが止まらない日というのは、たいてい、この距離がひらいている日です。
だから、数えるのをやめて、こう言ってみてください。
今日は、9月2日。
それだけです。
拍子抜けするくらい、それだけ。
でも、今、ここに戻ってくるというのは、思っているよりずっと強い引き算です。
今日の3分ワーク
夜でも、通勤の途中でもいいです。3つだけ置いていきますね。
① 紙かスマホのメモに、今年やろうと思っていたことを、思い出せるだけ書き出す。3つでも5つでも、順番もばらばらでいいです。
② そのなかから、いまの自分にはもう合わないものを、ひとつだけ選んで線を引いて消す。
このとき、「できなかったから消す」ではなく、「いまのぼくには要らないから、返す」という気持ちで消してみてください。ここが大事なところです。
③ 残ったもののどれかひとつに、「いつでもいい」と書き添える。
期限を消す、という引き算です。
足すのではなく、へらす。つみへらしです。
9月にやることを増やすのではなくて、9月に持っていくものを、ひとつ減らしてみる。
かばんが軽いほうが、遠くまで歩けますからね。
さいごに
月がかわると、世の中の空気が、すこし前のめりになります。
新しい期がはじまる。街の広告も切りかわる。
まわりが、みんな走りだしたように見える日があります。
でも、その空気に、あなたのペースまで持っていかれなくていいんです。
あなたの1年は、1月から12月に区切られている必要すらありません。
つらかった時期をまたいで歩いてきたあなたには、あなたの区切りがあります。
だいじょうぶ。
9月のほうから、あなたを追いかけてきたりはしませんから。
今日は、9月2日。
それだけを持って、トコトコ歩いていきましょうね。
