「元気?」
そう聞かれて、考えるより先に「元気!」と答えてしまった。
そのあとで、ちょっとだけ、こころがしぼんだ。
そんなこと、ありませんか?
ほんとうは、あんまり元気じゃなかった。
言おうと思えば言えたはずなのに、口が勝手に明るい声を出していた。
そんなあなたへ。
だいじょうぶ、あなただけじゃないですからね。
「本音が言えない」という相談を、よくいただきます
言い方はいろいろですが、だいたい同じところに行きつきます。
しんどいと言ったら、相手を困らせてしまう気がする。
重い人だと思われたくない。
そこまでの仲じゃない気がして、言うタイミングを逃す。
そして最後に、みなさんこう言うんです。
「こんな自分が、いやなんです」と。
ここだけは、はっきり言わせてください。
反射で「元気!」と言えてしまうのは、あなたの欠点ではありません。
それは、長いあいだ人の顔色を読んできた人の、身についた技術です。
相手の表情のわずかな変化。声のトーン。場の空気の重さ。
それが見えてしまうから、先まわりして明るいほうを選んでしまう。
見えない人には、できない芸当なんですよね。
だからまず、その技術を持っている自分を、責めないでほしいなと思います。
ぼくも、ずっと言えませんでした
ぼくは、たすけてと言うのが、ほんとうに下手でした。
起業していたころ、ぼくは「元気じゃないぼく」を人に見せられませんでした。
弱音をはいたら、まわりが不安になる。信用が減る。
そう思って、しんどい日ほど声を大きくしていた。
その延長で、ぼくはアディクションにのみこまれ、引きこもりました。
いま思うのは、あのころのぼくは、人を信じていなかったんだなということです。
言ったら離れていく、と思っていた。
でも実際に動けなくなって、ようやく人に頼ったとき、離れていった人ばかりではありませんでした。
ぼくが思っていたより、世界はやさしかった。
もっと早く言えばよかった、とは思いません。
あのときのぼくには、言えなかった。それでいいと思っています。
ただ、いま言えないでいるあなたにも、そのうちきっと、言える日がくる。
それだけは、知っておいてほしいなと思うんです。
いきなり本音を言わなくていい
ここで「勇気を出して本音を伝えましょう」と書いてしまうと、それはもう圧です。
ぼくはそれをしたくありません。
本音って、蛇口みたいに0か100かではないんですよね。
ちょろっと出す、という開け方があります。
「元気!」のかわりに、「ぼちぼちです」。
「だいじょうぶです」のかわりに、「ちょっと夏バテ気味で」。
それだけで、じゅうぶん本音です。
相手も困りませんし、あなたも嘘をつかずにすむ。
自然界には、相利共生という関係があるそうです。
どちらか一方が我慢するのではなく、おたがいがすこしずつ助かる関係。
人とのつきあいも、そっちのほうがながくつづくとぼくは思っています。
あなたがぜんぶ引き受ける形は、やさしいようでいて、じつは長もちしないんですよね。
「言わない」を選んだ日も、ちゃんと選んでいます
ここは勘ちがいされやすいところなのですが、言わないことが悪いわけではありません。
相手や場面によって、言わないほうがいいときは、ふつうにあります。
なんでもかんでも本音を出すのが誠実、というわけでもない。
しんどいのは、言わなかったことではなくて、言わなかった自分を責めてしまうことなんですよね。
「また言えなかった」と自分を裁いた瞬間から、グルグルがはじまる。
そのグルグルは、たっぷり疲れるわりに、なにも変えてくれません。
なので、こう置きかえてみてください。
言えなかったのではなく、今日は言わないほうを選んだ。
選んだのなら、それはあなたの判断です。
判断した人を、責める必要はありませんよね。
今日の小さな一歩
3つ置いていきます。ぜんぶやらなくていいです。ひとつでいいです。
① 今日いちど、「元気?」に「ぼちぼちです」と返してみる。相手はたぶん、なんとも思いません。それを確かめるための実験だと思ってください。
② 言えなかった日は、帰り道に、自分にだけ小さく言う。「ほんとは、しんどかったね」。声に出さなくていいです。こころのなかで、自分に向けて。
③ 夜、3分だけ。ノートに「今日、言わなかった本当のこと」を一行書く。だれにも見せません。書いて、閉じる。それだけ。
①ができなくても、②と③はできます。
外に出せなかった気持ちは、せめて自分が受けとってあげる。
それができれば、その日はもう、じゅうぶんです。
さいごに
反射で「元気!」と言ってしまう自分を、なおすべき欠点だと思わないでください。
それは、あなたが人をだいじにしてきた歴史そのものです。
ただ、そのやさしさの一滴だけ、これからは自分にも向けてあげてほしい。
あなたが「ぼちぼちです」と言える相手は、きっとどこかにいます。
まだ見つかっていないだけです。
だいじょうぶ。
今日は、言えなかった自分に「よくやったね」と言うところから、はじめましょうね。
