貯まらないのは、意志が弱いからじゃない——増やす前に、減らすという道

月曜の朝。

まだ何もはじまっていないのに、からだが重い。

そのうえ通帳やアプリの残高が頭をよぎって、こころまで曇る。

そんな朝って、ありませんか?

今月も、そんなに使ったつもりはないのに残らなかった。

節約もした。

ちゃんとしようと思っていた。

なのに、また同じところに立っている。

そういうとき、人はたいてい、こう結論します。

「ぼくは、意志が弱いんだ」と。

そんなあなたへ。

だいじょうぶ、あなただけじゃないですからね。

そして、たぶんそれ、意志の話じゃないんです。

お金は、こころの穴に流れていく

かつてのぼくは、お金の使い方がめちゃくちゃでした。

起業していたころは、稼いだぶんだけ、するっと出ていく。

「これは必要な投資だ」と、自分にいくらでも説明できました。

でも今からふり返れば、あのころ買っていたものの多くは、

モノでもサービスでもなく、安心だったように思います。

大きく見せるための安心。

遅れていないという安心。

だいじょうぶだと思いこむための安心。

やがてぼくは、アディクションに沈み、部屋から出られなくなりました。

その時期にわかったのは、

こころに穴があいているとき、お金はいくらでもそこへ流れていくということです。

止めようとしても止まらない。

意志で堰き止めているつもりでも、こころが不安な形をしているかぎり、

お金はその形にそって流れていきます。

だから、意志の弱さの話じゃない。

穴の話なんです。

そして穴は、その人の弱さでできているわけでもありません。

がんばってきた時間。

言えなかったこと。

のみこんだままの気持ち。

そういうものが積もって、すこしずつ、へこんでいく。

つまり穴は、あなたがちゃんと生きてきた証拠でもあるんです。

ぼくは今、そんなふうに思っています。

増やす前に、減らす

ぼくの生き方の土台に「つみへらし」という考えがあります。

足すより、手放す。

お金も、まったく同じでした。

収入を増やす。副業をはじめる。運用を勉強する。

どれもすばらしいことですし、否定はまったくしません。

でも、こころが「足りない」と鳴っている状態でそれをはじめると、

入口を広げたぶんだけ、出口も広がってしまうことがあります。

ぼくの場合は、そうでした。

だからぼくは、順番を逆にしました。

まず、減らす。

それも、我慢を増やす方向ではなく、

「もう要らなくなっていたもの」をそっと外していく方向で。

我慢は、いつか反動が来ます。

ガマンしたぶんを、こころはちゃんと覚えていて、あとで請求してくる。

でも、要らないものを外すのは、反動が来ません。

だってそれは、最初から欲しくなかったものだから。

外したあとに残るのは、さみしさじゃなくて、余白です。

そして余白があると、ふしぎなことに、

「なんとなく買う」が減ります。

こころに置き場所ができると、

外側に置き場所を買わなくてよくなるんですね。

責めるのを、いったんやめる

ここで「無駄づかいをやめましょう」と言いたいわけではありません。

繊細ながんばり屋さんは、もうじゅうぶんに自分を責めています。

明細を開くのがこわい。

数字を見ると、自分の人格まで採点された気持ちになる。

その感覚、ぼくにも覚えがあります。

でも、数字はただの事実です。

そこに「だからぼくはダメだ」とくっつけているのは、こころのほう。

事実と、感情。

このふたつを、そっと分けてあげてください。

分けるだけで、呼吸が少しラクになります。

明細に並んでいるのは、

あなたがその日その日を、どうにか生きのびてきた記録です。

コンビニのコーヒーも、

帰り道のタクシーも、

夜中にぽちっと押したボタンも。

そのときのあなたには、必要だったんだと思います。

過去の自分を、今の視力で採点しない。

それだけは、守ってあげてほしいんです。

今日の小さな一歩(3分)

今日から一週間、この①②③をやってみてください。

家計簿をつけ直す必要はありません。

①使ったとき、金額ではなく「気持ち」を一言だけメモする

「ホッとした」「なんとなく」「疲れてた」「うれしかった」。それだけでいいです。

②週末に、その言葉だけを並べて眺める

金額は見なくてかまいません。並んだ言葉が、あなたのこころの地図です。

③いちばん多く出てきた言葉に対して、お金以外の手当てをひとつ決める

「疲れてた」が多いなら、早く寝る日をひとつ。

「なんとなく」が多いなら、アプリをひとつ、ホーム画面から外す。

これは節約術ではありません。

穴の形を、そっと確かめる作業です。

そしてもし余裕があれば、もうひとつだけ。

固定費を、ひとつだけ見る。

全部やろうとするときっと疲れて、途中でやめてしまいます。

だから、ひとつ。

先月ちゃんと使ったか思い出せないものが、たぶんひとつはあります。

それを、今日、しずかに手放す。

減った金額は、月に数百円かもしれません。

それでいいんです。

金額よりも、「ぼくは減らせる」という感覚のほうが、ずっと長く効きます。

お金の不安がやっかいなのは、

「自分ではどうにもならない」という感じがくっついてくるところです。

だから、金額の大きさより、

自分の手で動かせたという事実のほうが、こころには効くんです。

数百円ぶんの、自信。

ばかにできません。

やわらかい締め

お金の話は、どうしても比べる話になりがちです。

でも、あなたのゆたかさは、あなたのこころの穴がしずかになった量で決まります。

だれかの残高とは、まったく関係のないところにあります。

貯まらなかったのは、意志が弱いからじゃありません。

これまで、こころをどうにか支えてきたからです。

そこはもう、責めなくていい。

淡々と、ひとつだけ減らす。

今週は、それだけで合格です。

月曜のあなたへ。

今日もまた、自分らしいペースで、トコトコ歩いていきましょうね。

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