あなたは、いまいる場所を、どうやって選びましたか。
胸をはって言える理由なんてなかった、という人のほうが、たぶん多いと思います。
ぼくも、そうでした。
それでもときどき、聞かれることがあるんです。
どうして、その仕事を選んだんですか、と。
そのたびにうまく答えられないまま、ここまで来ました。
今日は、その答えを、すこしだけ書いてみます。
九月九日は、菊の節句
今日は重陽の節句。
菊の節句とも呼ばれる日です。
菊って、ふしぎな花だなと思うんです。
桜も、あじさいも、ひまわりも、
それぞれの季節にいっせいに咲いて、いっせいに終わっていく。
菊が咲くのは、そのあとです。
花の数がすっかり少なくなった、季節の終わりごろ。
でも、遅れて咲いたからといって、
菊のことを「出おくれた花」と呼ぶ人は、ひとりもいません。
むしろ、いちばん長く飾られていたりする。
咲く順番がちがうだけ。
それは、遅れじゃないんですよね。
戻ってきたあとの話
ぼくは一度、ぜんぶ失いました。
起業して、アディクションに沈んで、部屋から出られなくなって。
そのあたりのことは、これまでにも書いてきたので、今日はここまでにします。
書きたいのは、そこから戻ってきたあとのことです。
どうにか戻ってこられたぼくが、次に何をするかを考えたとき、
選んだのは、障害のある人たちが働く場所に関わる、という道でした。
なぜだったのか。
いちばん近い言葉は、たぶん、これです。
ぼくを戻してくれたのは、はげましでも、正論でもなくて、
「これ、あなたにお願いしたい」という、小さな役割だったから。
役割は、はげましより強かった
だいじょうぶだよ、と言われても、こころはあまり動きませんでした。
ありがたいのはわかる。
心配してくれているのも、わかる。
でも、動けないんです。
なのに、これやってくれる?と言われたときだけ、
なぜかからだのほうが先に動きました。
役割があると、朝、起きる理由ができます。
自分のためには起きられなくても、
だれかが待っていると思うと、なぜか布団から出られる。
人ってそういうふうにできているんだな、と、あのときはじめて知りました。
必要とされることは、はげまされることより、ずっと強い。
だからぼくは、その「役割」がある場所を、ふやしたかったんです。
たいそうな使命感ではありません。
自分が助かったやり方を、そのまま置いていきたかっただけ。
役割は、小さいほどいい
ここで言う役割は、たいそうなものではありません。
その日、ひとつだけ任されること。
それくらいで、ちょうどいいんです。
大きな期待をかけられると、こころはかえって固まります。
できなかったときのことが、先に浮かんでしまうから。
でも、小さく、その日かぎりの役割なら、こわくない。
そして、ふしぎなことが起きます。
任されたその瞬間に、背中がすっと伸びる人がいるんです。
さっきまでうつむいていた人が、
自分のやることが決まったとたん、顔を上げる。
ぼくは、あの瞬間を何度も見てきました。
そして見るたびに、ああ、これだったな、と思うんです。
人を元気にするのは、たぶん、言葉じゃありません。
「あなたの場所がここにある」という事実のほうです。
「早く咲け」と言われない場所を
もうひとつ、理由があります。
ぼくは、咲く順番を急かされない場所をつくりたいと思っています。
世の中には、季節が決まっている場所がたくさんあります。
この年齢までにこう、この期間でここまで、というふうに。
それが悪いと言いたいわけではありません。
決まった季節があるから、うまく回る場面もたくさんあります。
ただ、ぼくは、そうじゃない場所も要ると思っているんです。
まわりが咲きおわったころに、ゆっくり咲く人がいる。
何度かつぼみのまま終わって、それでもまた、つぼみをつける人がいる。
その人の花が、その人の時期に咲ける場所。
ぼくがつくりたいのは、そういう場所です。
そこでは、遅いという言葉が、ただの「順番」に変わります。
理由は、あとから育つ
ここまで書いておいて、ちゃぶ台をひっくり返すようなんですが。
正直に言うと、選んだそのときには、こんな言葉はひとつも持っていませんでした。
なんとなく、そっちのほうに足が向いた。
ほんとうに、それだけだったんです。
理由は、あとから育ちました。
やっているうちに、ああ、ぼくはこれがしたかったのかと、
少しずつ、言葉のほうが追いついてきた。
だからもし、あなたがいま、
なんとなくここにいる。
ちゃんとした理由がない。
そう思っていても、まったく心配いらないと思うんです。
理由がないんじゃなくて、まだ言葉になっていないだけ。
つぼみのなかには、もう色が入っています。
外から見えないだけで。
今日の小さな一歩(3分)
紙でも、スマホのメモでもいいです。
①「なぜ、いまの場所にいるのか」を、一行だけ書く
「お金のため」でも「なんとなく」でも、まったくかまいません。かっこいい理由を探さないでください。
②その下に、「そこで、いちばんホッとした瞬間」をひとつ書く
小さいほどいいです。だれかのひとことでも、休憩中の景色でも。
③あしたは、その瞬間をもう一回つくれないか、ひとつだけ試してみる
席を立つ時間をずらす。おなじ人にひとこと話しかける。それくらいで、じゅうぶんです。
理由は、頭で決めるものじゃなくて、
ホッとした瞬間のほうから、あとで見つかるものだとぼくは思っています。
やわらかい締め
菊は、遅れて咲いているつもりなんて、たぶんないんですよね。
ただ、自分の季節が来たから咲いている。
あなたにも、あなたの季節があります。
それが何月なのかは、ぼくにはわかりません。
でも、順番がちがうことと、遅れていることは、まったく別ものです。
そこだけは、そっと覚えておいてほしいなと思います。
焦らず、比べず、背伸びせず。
今日もまた、自分らしいペースでトコトコ歩いていきましょうね。
ぼくたちが日々やっていることは、こちらにそっと置いておきます。
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