「フルタイムで働けないなら、働かないほうがましだ」
そんなふうに、思ってしまったことはありませんか?
体調に波がある人。
家族のケアを抱えている人。
しばらく休んでいて、そろそろ戻ろうかと考えている人。
戻るなら、前と同じだけ動けるようにならなきゃいけない。
中途半端に戻るのは、まわりに悪い。
そう思って、いつまでも「万全になる日」を待ってしまう。
そんなあなたへ。
だいじょうぶ、あなただけじゃないですからね。
今日は、ぼくがしずかに願っていることを、ひとつだけ書かせてください。
「はたらく」の量の話です。
ぼくは、量を誇りにしていました
すこしだけ、昔の話を。
ぼくは若いころに事業をはじめました。
あのころのぼくが、自分の価値をどこで測っていたかというと、
まぎれもなく「量」でした。
何時間やったか。何日連続でやったか。
何時に寝て、何時に起きたか。
寝ていない自慢を、こころのどこかで、勲章みたいに思っていたんです。
だからぼくのなかに、「はたらく」の目盛りは、ふたつしかありませんでした。
フルか、ゼロか。
そして、フルが続かなくなった日。
ぼくの手元には、ゼロしか残っていませんでした。
そこからは、ご存じのとおりです。
アディクションを抱えて、部屋から出られなくなりました。
いま思うのは、あのときのぼくに足りなかったのは、根性ではなくて、
目盛りの数だったな、ということです。
0.3でつづける、という選択肢が、頭のなかにひとつもなかった。
100でやれないなら、やらない。
そのルールを自分に課していたら、そりゃあ、ゼロにしかならないですよね。
ちょうどいい量は、ひとりひとりちがう
ぼくはいま、障害のある人たちがはたらく場所に関わっています。
そこでぼくが日々見ているのは、
「はたらく量」が、ほんとうにひとりひとりちがう、ということです。
週に2日来る人がいます。
午前だけの人がいます。
今日は30分だけ手を動かして、しずかに帰る人がいます。
大事なのは、それが「少ない」のではない、ということなんです。
その人にとって、つづけられる量が、そこだった。
それだけの話なんですよね。
そして、つづけられる量でやっている人の手もとは、ふしぎと落ちついています。
急いでいない。あとがない、という顔をしていない。
淡々と、今日のぶんをやって、帰っていく。
その姿を見ていると、ぼくのほうが、いつも背筋が伸びます。
ぼくがつくりたい場所のこと
だれかを責めたいわけでも、なにかを指さしたいわけでもありません。
ぼくには、つくりたい景色があるだけです。
ぼくがつくりたいのは、
はたらく量を、その日のからだに合わせて決めていい場所です。
フルか、ゼロか、ではなくて。
その手前に、いくつも段があるような場所。
今日は2時間。今週は2日。
今月はすこし多め。来月はすこしゆるめ。
そんなふうに、量が呼吸するみたいに上下しても、
「はたらいている」と胸を張って言える場所。
なぜそれをつくりたいかというと、
りっぱな理念があるからではありません。
フルでやれなくなった日に、ゼロしか選べなかったぼくが、
あのとき、0.3でつづけられる場所を、心底ほしがっていたからです。
たったそれだけの理由です。
これは、あなたの一日のなかにもある話です
こう書くと、「それは特別な現場の話でしょう」と思われるかもしれません。
でも、ぼくはそう思っていないんです。
たとえば、あなたの今日。
部屋をぜんぶ片づける時間がないから、手をつけない。
まとまった時間がとれないから、勉強をはじめない。
ちゃんとした文章が書けないから、返信をしない。
これ、ぜんぶ「フルか、ゼロか」ですよね。
まじめな人ほど、この二択でものを考えます。
中途半端が、いちばん気持ち悪いから。
でも、その気持ち悪さのおかげで、
ぼくたちはずいぶん多くのことを、はじめる前にあきらめてきました。
つみへらし、という言葉をぼくは大切にしています。
足すより、手放す。
今日、手放してほしいのは、努力そのものじゃなくて、
「フルでなければ意味がない」という前提のほうです。
それを1枚はずすだけで、動ける範囲がぐっと広がります。
今日の、小さな一歩
やることを増やすワークではありません。減らすワークです。
① 今日やろうとしていることを、ひとつだけ選ぶ
気が重いもの、後回しにしているものがいいです。
② それを、いさぎよく「半分」に書きかえる
30分の掃除 → 15分。
1時間の勉強 → 10分。
きちんとした返信1通 → 1行だけ返す。
半分でも重いなら、四分の一でいいです。
③ 終わったら、「半分できた」ではなく「やった」とだけ書く
ここがいちばん大事です。
半分の量には、半分の点数がつく、というルールを、今日は使わない。
やったか、やっていないか。それだけで見る。
小さくして、つづける。
つづいたものは、あとから勝手に量がふえていきます。
逆に、大きいまま止まっているものは、いつまでも0のままです。
やわらかい締め
万全になってから戻ろう、と思っていると、
その日はなかなか来てくれません。
万全じゃないまま、すこしだけ動く。
そのくらいのほうが、たぶん、長くつづきます。
はたらくの形も、量も、もっと自由でいい。
ぼくは、そういう場所をこつこつつくっていきたいと思っています。
焦らず、比べず、背伸びせず。
今日は、いつもの半分から。
だいじょうぶ。
半分でも、あなたはちゃんと、はたらいていますからね。
