目は覚めているのに、からだが起きあがらない朝って、ありませんか?
九月の後半になって、明け方の空気がすこし冷たくなって。
目覚ましは、ちゃんと聞こえている。
頭も、うっすら働いている。
なのに、布団から出るまでに、20分、30分かかってしまう。
そして、ようやく起きあがったとき、いちばん最初に思うのが、
「また、こんな時間まで」。
一日のはじまりが、自分への小さながっかりから始まってしまう。
そんなあなたへ。
だいじょうぶ。あなたの意志が弱いから、ではないですからね。
朝を、意志で越えようとすると、たいてい負けます
ぼくの実感でしかありませんが、朝という時間は、
こころの力がいちばん少ない時間帯だと思っています。
まだ日が昇りきっていない。部屋も、からだも冷えている。
前の日の疲れも、まだ抜けきっていない。
つまり、一日でいちばん条件の悪い時間なんですよね。
そこに向かって、「気合いを入れて起きる」という作戦を持っていく。
これはもう、負ける準備をして戦いに行くようなものです。
だからぼくは、朝は決意でなく、段取りで越えるものだと思っています。
意志の量を増やそうとしない。
起きるまでの手順のほうを、ちいさく組みなおす。
ぼくの朝が、いちばんこわかったころ
すこしだけ、昔の話をさせてください。
ぼくは若いころに事業をはじめて、そのあとうまくいかなくなり、
アディクションを抱えて、部屋から出られなくなりました。
あの時期、一日のなかでいちばんつらいのが、朝でした。
目が覚めた瞬間に思うんです。
「ああ、今日も、まだ一日ある」
起きるのが嫌だったんじゃないんですよね。
起きたあとに待っている一日の長さが、こわかった。
だからぼくは、布団のなかで、起きない理由をずっと探していました。
探せば、いくらでも見つかりますから。
そんなぼくが、すこしずつ動きはじめたきっかけは、
がんばったことではありませんでした。
朝の目標を、とことん下げたことです。
「起きる」ではなくて、「上半身を起こして、座る」。
それだけ。
しかも、座ったあと、また横になっていい、というルールにしました。
ふしぎなもので、いちど座ってしまうと、
そのまま立てる日が、けっこうあったんです。
起きられなかったんじゃなくて、
「起きる」という目標が、当時のぼくには大きすぎただけでした。
秋の入り口が、とくにしんどい理由
もうひとつ、季節の話を。
九月の後半になると、日の出の時刻が、夏のいちばん早いころにくらべて
1時間近く遅くなっています。
同じ時刻に目覚ましが鳴っても、
部屋の暗さが、ひと月前とはまるでちがうんですよね。
ぼくたちのからだは、光をたよりに一日のはじまりを感じとっているところがある、
と言われます。
ぼくは専門家ではないので、断言はしません。
ただ、すくなくとも、
あなたのやる気が急に落ちたわけではない、ということは言えると思うんです。
朝のほうが、変わっている。
そう思うだけでも、こころの荷物は、ひとつ軽くなります。
繊細ながんばり屋さんは、朝に一日ぶん背負ってしまう
もうひとつだけ。
繊細ながんばり屋さんは、目が覚めた瞬間に、
その日にある予定を、まとめて頭のなかに広げてしまいがちです。
あの連絡をしないと。
あの人と話さないといけない。
夕方までに、あれを終わらせないと。
まだ布団のなかにいるのに、もう一日ぶんの重さを背負っている。
それは、起きあがれなくもなりますよね。
だって、すでに重たいですから。
だからぼくは、朝いちばんに考えることを、
「今日ぜんぶ」から「最初の3分」に切りかえるようにしています。
一日を持ち上げようとしない。
最初の3分だけ、手に持つ。
今日からの、朝の段取り(夜にひとつ、朝にふたつ)
① 夜のうちに、カーテンを手のひらひとつぶんだけ開けて寝る
全開でなくていいです。細く開けておくだけ。
朝の光が、目覚ましより先に部屋に入ってきてくれます。
防犯や環境の都合でむずかしければ、そこは無理をしないでください。
かわりに、目覚ましを窓ぎわに置くだけでも、朝いちばんの動線が変わります。
② 朝、立ち上がる前に、布団のなかで「大きく伸び」をひとつ
手足を、遠くへゆっくり伸ばして、10秒。
息は止めないで、細く吐きながら。
起きるための動作ではなくて、からだに「そろそろですよ」と伝える合図です。
③ 今日の目標を、「起きる」から「布団の上に座る」に下げる
座ったあと、また横になっていいことにしてください。
それでも、座れた時点で、あなたの朝はもう始まっています。
そしてもうひとつ、お願いがあります。
起きられた日の連続記録を、つけないでください。
記録は、つづいているあいだは味方ですが、
途切れた日に、いちばん強くあなたを責めますから。
それでも、しんどさがつづくようなら
朝が起きられない日が長くつづいていて、
日中のだるさや気持ちの重さも重なっているようなら、
ひとりで抱えこまずに、お医者さんや相談の窓口をたよってみてください。
ぼくは専門家ではないので、原因を決めつけることはできません。
ただ、ひとつだけ言えるのは、
ぼく自身、ひとりでなんとかしようとしていた時期が、いちばん長引いた、ということです。
たよるのは、負けではないですからね。
やわらかい締め
朝が重い季節に入りました。
布団から出るのに30分かかった日も、
あなたはちゃんと、その日を始めています。
起きられなかったのではなくて、
今日の「起きる」が、すこし大きすぎただけ。
焦らず、比べず、背伸びせず。
あしたは、伸びをひとつと、座るところまで。
それだけで、じゅうぶんです。
