ありがとうを言いそびれたまま、遠くなってしまった人がいます

言いそびれたまま、遠くなってしまった人。

あなたにも、ひとりくらい、いませんか?

ふとした瞬間に思い出すのに、

いまさら連絡するのも変な気がして、そのままにしている人。

お世話になったのに、ちゃんと伝えていない。

あのとき助けてもらったのに、当たり前みたいな顔をしていた。

月曜の朝、電車のなかでそんなことを思い出して、

胸のおくがチクッとする。

そんなあなたへ。

だいじょうぶ、あなただけじゃないですからね。

「ありがとう」は、遅れて届くもの

ありがたい、という言葉は、

もともと「有ることが難しい」という意味なのだと言われます。

めったにない、ということ。

でも、めったにないことって、

起きているそのときには、めったにないと気づけないんですよね。

毎日ごはんがあること。

「おかえり」と言ってくれる人がいること。

何も言わずに、ただ隣にいてくれた人がいたこと。

あるあいだは、ふつうの景色に見えている。

なくなってから、はじめて「有ることが難しかった」とわかる。

だから、ありがとうは、たいてい遅れます。

遅れるのが、ふつうなんです。

ぼくが、言えなかった時期のこと

かつてのぼくは、事業がうまくいかなくなって、

アディクションを抱えて、部屋から出られなくなりました。

あの時期、ぼくのまわりには、

それでも離れずにいてくれた人たちがいました。

でもぼくは、その人たちに、ありがとうと言えなかった。

言えなかった理由は、いま思えばはっきりしています。

自分を許せていなかったからです。

こんな状態のぼくが感謝を口にするなんて、図々しい。

迷惑をかけている側が、いい顔をするな。

そうやって、ありがとうという言葉さえ、

自分に禁止していたんですよね。

いま考えると、ずいぶん不器用な話です。

ありがとうは、立派になってから言う資格をもらうものじゃない。

どんな状態のぼくでも、言ってよかったはずなのに。

思い出すことは、もう、届いている

こう書くと、

「じゃあ、いまからでも連絡しなきゃ」と思う方がいるかもしれません。

でも、それは言いたいことじゃないんです。

無理に連絡しなくていい。

むしろ、しなくていいと、ぼくは思っています。

相手にも生活があるし、あなたにも今の暮らしがある。

急に連絡することが、いつも良いこととは限りません。

それに、繊細ながんばり屋さんは、

「連絡しなきゃ」がまた新しい宿題になってしまいがちです。

宿題を増やしたくて、この話をしているわけじゃない。

ぼくが思うのは、

思い出している時点で、それはもう感謝の形をしている、ということです。

その人のことを、あなたはまだ憶えている。

その人がしてくれたことを、忘れなかった。

伝わっていなくても、あなたのなかには、たしかに残っている。

残っているものは、こぼれていきます。

あなたがだれかにやさしくするとき、

言いそびれたあのありがとうは、形を変えて外に流れていく。

感謝って、たぶん、そういう回り方をするものなんじゃないでしょうか?

言いそびれるのは、あなたが軽い人だからじゃない

ここも、ひとつだけ書いておきたいことがあります。

ありがとうを言いそびれる人って、

たいてい、感謝していない人じゃないんですよね。

むしろ逆で、感謝が重すぎて言えないんです。

「ありがとう」の一言では足りない気がする。

あんなに助けてもらったのに、この程度の言葉で済ませたら失礼だ。

だから、ちゃんとした言い方が見つかるまで待とうと思って、

待っているうちに、時間だけが過ぎていく。

繊細ながんばり屋さんは、この道をよく通ります。

軽々しく言えないから、言えない。

大切に思っているから、雑に扱えない。

その結果、なにも渡せないまま、遠くなる。

だからね。

言いそびれたことを、あなたの薄情さの証拠みたいに扱わないでください。

それはむしろ、あなたが相手を軽く扱わなかった証拠です。

今日の、3分

連絡しなくていい。会いにいかなくていい。

今日できる、ちいさな3つだけ。

① その人の顔を、ひとりだけ思い浮かべる

たくさん思い出さなくていいです。ひとりで十分。

② 何をしてもらったのか、ひとつだけ具体的に思い出す

「やさしくしてもらった」ではなく、

「あのとき黙って隣に座っていてくれた」くらいまで、具体的に。

③ こころのなかで、その人に「ありがとうございました」と言う

声に出さなくていいです。届けようとしなくていい。

ただ、あなたのなかで、一度ちゃんと言葉にする。

これだけで、胸のチクッとする感じが、

すこしあたたかいものに変わっていきます。

もし、それでも伝えたくなったら。

そのときは、短い一行を送ればいい。

「ふと思い出しました。あのときはありがとうございました」

それだけで、じゅうぶんです。

やわらかい締め

言いそびれたことを、罪みたいに抱えなくていいですからね。

言えなかったのは、あなたが冷たかったからじゃない。

そのときのあなたが、いっぱいいっぱいだっただけです。

今日、ひとりの顔を思い出せた。

それはもう、じゅうぶんやさしいことだと思うんです。

焦らず、比べず、背伸びせず。

今日の月曜も、自分らしいペースでトコトコ歩いていきましょうね。

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