期待しすぎない、ちょうどいい距離のつくりかた

あの人なら、わかってくれるはず。

これくらい、言わなくても、察してくれるはず。

そう思っていたのに、相手の反応がそっけなくて、こころが、しゅんとなってしまうこと。ありませんか。

期待していたぶんだけ、裏切られた気がして、勝手にさみしくなる。そして、そんなふうに感じてしまう自分を、また責めてしまう。

そんなあなたへ。

だいじょうぶ。あなただけじゃないですからね。

人間関係でくたびれてしまうのは、あなたが、相手のことを真剣に思っているからこそ。今日は、人との「距離」について、ぼくの失敗もふくめて、お話しさせてください。

しんどさの正体は、たぶん「期待」のほう

少し立ち止まって、考えてみたいんです。

人間関係で傷つくとき、その痛みは、どこから来ているのでしょう。

ぼくがいきついた答えは、こうです。痛みは、相手の言動からというより、自分の「期待」から来ている、ということ。

「わかってくれるはず」と期待する。でも、相手は、その期待を知らない。だから、期待どおりには動いてくれない。すると、こちらが、勝手にがっかりする。

相手は、何も悪いことをしていないんです。

ただ、ぼくたちが、相手に「こうあってほしい」という荷物を、そっと預けて、それが返ってこないことに、傷ついている。

つまり、人間関係のしんどさの多くは、距離が近すぎるとき、期待が大きすぎるときに、生まれているのかもしれません。

かつてのぼくは、人に期待しすぎていた

正直に打ち明けると、かつてのぼくは、人との距離の取りかたが、本当に下手な人間でした。

起業して、いっしょに働く仲間ができたころ。ぼくは、その人たちに、たくさんのことを期待しました。ぼくと同じくらい本気でいてほしい。ぼくの気持ちを、わかってほしい。

でも、人は、ぼくとは違う人です。同じ熱量を、同じタイミングで持てるわけが、ない。

それなのに、期待どおりにならないたびに、ぼくは勝手に傷つき、勝手に距離を縮めようとして、相手をしんどくさせていました。

その先に待っていたのは、孤独でした。

近づきすぎては、傷ついて。傷つきすぎて、最後は、人と会うのもこわくなって、部屋から出られなくなった時期があります。

ひとりになって、ようやく気づいたんです。

ぼくは、人を大切にしているつもりで、人に「ぼくの理想」を背負わせていただけだったんだな、と。

ほんとうに相手を大切にするなら、相手を、ぼくの期待から、自由にしてあげるべきだったんです。

「冷たくなれ」と、言いたいわけではありません

こう書くと、人に期待せず、ドライに付き合おう、という話に聞こえるかもしれません。

でも、ぼくが言いたいのは、そういうことではないんです。

距離をとるというのは、相手を突き放すことではありません。

むしろ、相手を、相手のまま尊重すること。

「あなたは、あなたのペースでいい。ぼくの期待どおりに動かなくて、いいんだよ」

そう思えたとき、はじめて、お互いが、らくに息ができる関係になります。

期待を手放すことは、愛情を手放すことではないんです。

「こうあってほしい」を手放して、「あなたのままでいい」を渡す。それは、もっと深い、やさしさの形だと、ぼくは思っています。

そして、これは、相手のためだけの話ではありません。

期待を手放すと、いちばんらくになるのは、ほかでもない、自分自身なんです。

「わかってほしい」「察してほしい」を握りしめているあいだ、ぼくたちは、ずっと相手の反応に、こころを揺さぶられつづけます。相手のひとことで、舞い上がったり、しゅんとなったり。自分の機嫌の手綱を、相手に預けてしまっている状態です。

期待をそっと自分の手に戻すと、その手綱も、自分の手に戻ってきます。

相手は相手、自分は自分。その境界線が、すこしくっきりするだけで、人と会ったあとの、あの、どっと押し寄せる疲れが、ずいぶん軽くなるんです。

今日できる、ちいさな一歩

もし、最近、だれかとの関係で、こころが疲れているなら。

ひとつだけ、試してみてほしいことがあります。

その人を思い浮かべて、こう問いかけてみてください。

「ぼくは、この人に、どんな『期待』という荷物を、預けているだろう?」

「わかってほしい」かもしれない。「いつも優しくしてほしい」かもしれない。「自分を優先してほしい」かもしれない。

その荷物を、ひとつ見つけられたら。

心のなかで、そっと、こう言ってみる。

「この期待は、ぼくのもの。あなたに、背負わせなくてもいいね」

期待を、相手の肩から、自分の手のなかに、そっと戻してあげる。

それだけで、こころの距離が、ふっと、ちょうどよくなります。

人との距離は、近ければ近いほどいい、というものではありません。

すこし間があるからこそ、おたがいに、のびのびと呼吸できる。

焦らず、比べず、背伸びせず。

今日もまた、人と、ちょうどいい距離で、トコトコ歩いていきましょうね。

あなたが、いま、いちばん期待を預けている人は、だれですか。

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