金曜の夜に、完璧をほんの少しだけゆるめる

一週間、おつかれさまでした。

金曜の夜。やっと、ひと息つける時間のはずなのに。

頭のなかでは、まだ。「あれ、ちゃんとできたかな」「あの言い方、まずかったかな」

そんな反省会が、グルグルと、まわっていませんか。

ぜんぶ、きちんとやらないと、気がすまない。ひとつでも、できていないと、自分を許せない。週末になっても、こころが、オフにならない。

そんなあなたへ。だいじょうぶ。あなただけじゃないですからね。

完璧主義というのは。言いかえれば、自分に、とても誠実だということです。手を抜けない。ごまかせない。いいかげんに、できない。

それは、本当に、うつくしい性質なんです。あなたが、これまで、ものごとを丁寧にやってこられたのも、その性質のおかげです。きっと、まわりからは、信頼されてきたはずです。

でも、その誠実さの矛先が、いつも、自分自身に向いて。鞭になってしまうと、こころは、だんだん、すり減っていきます。

正直に打ち明けると、かつてのぼくは、完璧主義の、かたまりでした。

起業して、すべてを、百点にしないと、気がすまなかった。九十九点でも、その一点が、許せない。できていない一点ばかりを、虫めがねで見て、自分を責めていました。

うまくいった九十九を、まったく見ずに。できなかった、たったひとつを、いつまでも、見つめていたんです。ほめられても、その言葉は、するりと通りすぎて。ひとつの小言だけが、ぐさりと、刺さって、抜けない。

そういう人は、たいてい、まわりには、やさしいんです。他人の失敗は、いくらでも、ゆるせる。なのに、自分にだけは、一ミリの、ゆるしも、出さない。

そのやさしさを、ほんの少しでいいので。自分自身にも、わけてあげてほしいんです。

完璧を手放すのは、こわいかもしれません。ゆるんだら、だめになってしまうんじゃないか、と。

でも、だいじょうぶ。あなたは、もう、じゅうぶん、がんばれる人です。すこし、手綱をゆるめたくらいでは、こわれません。

むしろ、ゆるめたぶんだけ、こころに、しなやかさが、もどってきますから。

竹が、雪の重みに、ボキッと折れないのは。かたいからでは、なくて、しなやかに、しなるからです。

完璧で、かたいままだと、ある日、ポキッと、いきます。すこし、ゆるくて、しなやかなほうが、長く、もちこたえられる。あなたのこころも、どうか、竹のように、しなやかに。

そうやって、自分に百点を求めつづけた先で。ぼくのこころは、ボキッと、折れてしまいました。

走りすぎて、お酒や刺激に逃げて。最後は、部屋から出られなくなった時期がありました。

皮肉なことに。完璧を求めすぎたぼくは、いちばん、不完全な自分に、なってしまったんです。

あのとき、ぼくに足りなかったもの。それは、もっと完璧になる力では、ありませんでした。

「これくらいで、いっか」と、自分に言ってあげる。その、ゆるさのほうでした。

禅に、『大巧若拙』(たいこうじゃくせつ)という言葉があります。本当に巧みなものは、一見、つたなく見える、という意味です。

きっちり、かっちり、完璧に仕上げたものより。すこし、抜けがあって、余白があるもののほうが。じつは、人のこころを、ほっとさせたりする。

手づくりの、すこしいびつな茶碗が、なぜか、こころに沁みるように。完璧な工業製品より、人の手のあとが残るもののほうが、あたたかい。

人も、おなじだと、ぼくは思うんです。

百点満点で、すきのない人より。ちょっと、抜けていて、ゆるみのある人のほうが。なぜか、いっしょにいて、安心できたりしますよね。

完璧じゃない、というのは。欠点ではなくて、人としての、あたたかい余白なんです。人が、あなたに近づける、すきまなんです。すきのない人には、人は、近づきにくいものですから。

だから、金曜の夜くらいは。その完璧を、ほんの少しだけ、ゆるめてみませんか。

完璧主義を、ぜんぶ捨てましょう、とは言いません。それは、あなたの、大切な持ち味ですから。ただ、夜くらいは、その手綱を、すこし、ゆるめてあげる。

今日できる、小さな一歩。むずかしいことは、しなくていいんです。

今夜、ねむる前に。今日の自分に、ひとつだけ、できなかったことを、思い出してみてください。

そして、それに向かって、こうつぶやく。「まあ、いっか。それくらい」

口に出すと、なんだか、力が抜けて、笑えてくるかもしれません。それで、いいんです。

「まあ、いっか」は、なげやりな言葉ではありません。不完全な自分を、まるごと、ゆるしてあげる、やさしい呪文です。

そして、できれば、もうひとつ。今日、できたことを、ひとつだけ、思い出して。「これは、ちゃんとできた。えらい」と、認めてあげてください。減点ではなく、加点で、一日を、しめくくる。それが、すり減ったこころに、すこしずつ、灯りを、ともしていきます。

焦らず、比べず、背伸びせず。百点じゃない自分を、ちょっとだけ、ゆるめて。

週末は、力を抜いて、トコトコ、休んでいきましょうね。

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