人と比べて、しんどくなったあなたへ

きょうも、ある読者の方の声に、こたえるように書いてみます。

「スマホをひらくたびに、人と自分を、比べてしまいます。みんな、キラキラしていて、うまくいっていて。それにくらべて、自分は……と、落ちこんでしまうんです」

ああ、その気持ち。ぼくにも、痛いほど、おぼえがあります。

そんなあなたへ。だいじょうぶ。あなただけじゃないですからね。

SNSをひらけば、そこには、だれかの、いちばんいい瞬間ばかりが、ならんでいます。楽しそうな旅行。おいしそうなごはん。輝かしい成功の報告。

それを見ていると、自分だけが、立ちどまっているような。自分だけが、取りのこされているような、気持ちになる。

そして、ついさっきまで、ふつうに過ごせていたはずの一日が。急に、色あせて、見えてくる。さっきまで、おいしかったごはんも、急に、味気なく感じてしまう。

でも、ひとつ、思い出してほしいんです。

あなたが見ているのは、その人の、人生のすべてではありません。その人が、見せたいと選んだ、ほんの一場面、だけなんです。

舞台の、スポットライトのあたった、一瞬。その裏がわにある、楽屋の疲れや、なみだは、けっして、映りません。

だれもが、いちばんいいところだけを、切りとって、ならべている。あなたが、自分の、いちばんしんどい部分と、それを、くらべている。

これでは、勝てるはずが、ないんです。そもそも、勝ち負けの、土俵が、ちがうのですから。

正直に打ち明けると、かつてのぼくも、比べることに、とりつかれていました。

起業して、まわりの経営者と、いつも自分を、くらべていました。あの人のほうが、稼いでいる。あの人のほうが、すごい、と。

その比較のレースに、勝ちつづけようとして。ぼくは、走るのを、止められなくなりました。

お酒や刺激で、ごまかしながら走って。最後は、ぜんぶ失って、部屋から出られなくなりました。

あのとき、気づいたんです。他人と比べているかぎり、こころが安らぐ日は、ぜったいに、来ない。

なぜなら、上を見れば、かならず、もっとすごい人がいる。このレースには、ゴールが、ないんです。

たとえ、だれかに勝てたとしても。その喜びは、つかのま。すぐに、別の「上」が、見えてくる。勝っても、勝っても、こころは、安らがない。

ぼくが、ようやく走るのをやめられたのは。だれかに勝ったからでも、いちばんになったからでも、ありませんでした。

ぜんぶ失って、レースから、強制的に、おろされて。はじめて、走らなくても、空がきれいだと、気づけたから。比べる相手が、いなくなって、はじめて、こころが、しずかになったんです。

いまは、だれかが、ぼくより、うまくいっていても。「よかったね」と、すなおに、思えるようになりました。

それは、ぼくが、えらくなったからでは、ありません。ただ、自分の足もとに、しあわせがあると、気づけたから。おなかが、満ちている人は、よその、ごちそうを見ても、あせりませんから。

比べることが、ぜんぶ、わるいわけでも、ありません。だれかのかがやきが、自分の、はげみになることだって、あります。

ただ、それが、自分を責める材料に、なってしまうなら。そのときは、そっと、画面を閉じて。自分の足もとの、ちいさな灯りを、見つめなおせばいいんです。

比べることでしか、自分の価値を、はかれなくなると。ぼくたちは、一生、走りつづけることになる。

禅に、『他は是れ吾にあらず』(たはこれわれにあらず)という言葉があります。他人は、自分ではない。だから、他人の道を、自分の道と、くらべても、意味がないんです。

やなぎは、みどり。はなは、くれない。

やなぎが、はなと、自分を比べて、「赤くなれない」と悩むでしょうか。やなぎは、ただ、みどりのまま、うつくしくあればいい。

あなたも、おなじです。他人の色と、自分の色を、くらべる必要なんて、ないんです。あなたの色は、あなたにしか、出せないのですから。

You can be any color you want.あなたは、あなたの色で、ちゃんと、うつくしい。

今日できる、小さな一歩。比べることを、いきなり、やめるのは、むずかしいものです。やめようと思うほど、かえって、気になってしまうものですから。

だから、まずは、こうしてみませんか。

人と比べて、こころが、ざわついたとき。スマホから、すっと目をあげて。

自分の手のなかにある、ちいさな「ありがたいこと」を、ひとつ、さがしてみる。

あたたかい飲みものがある。今日も、ごはんが食べられた。こうして、文章を読む、こころの余裕が、すこしある。

なんでもいい。ひとつ、見つかれば、それでいいんです。

比べるまなざしを、外がわから、自分の足もとへ。そっと、向けなおしてあげる。

それだけで、ざわついたこころは、すこし、しずまっていきます。ないものを数えるより、あるものを数える。そのほうが、ずっと、こころは、あたたかくなりますから。

焦らず、比べず、背伸びせず。あなたの色を、だれかの色とくらべないで。

あなたは、あなたのまま。それで、じゅうぶん、うつくしいんですからね。

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