ふと、こんなことを思うこと、ありませんか。
もっとお金があれば、安心できるのに。
もっと稼げれば、もっといいものが買えれば、この不安は消えるのに。
通帳の残高を見るたびに、なぜか、ほっとするより先に、「足りない」という気持ちがやってくる。けっして貧しいわけではないのに、いつも、こころのどこかが満たされない。
そんなあなたへ。
だいじょうぶ。あなただけじゃないですからね。
「足りない」という感覚は、お金の多い少ないとは、あまり関係がないのかもしれません。今日は、お金との向き合いかたについて、ぼくの失敗もふくめて、すこしお話しさせてください。
『知足』という、東洋の知恵があります
『知足』(ちそく)。
足るを知る、と読みます。
いま、自分が持っているもので、じゅうぶんに足りている。そのことに気づける人が、ほんとうのゆたかさを手にしている、という教えです。
逆に、どれだけたくさん持っていても、「足りない」と思っているうちは、その人はいつまでも貧しい。お釈迦さまも、そんなふうに説いたと言われています。
でも、ここで、正直に言わせてください。
「足るを知りなさい」と言われて、はい、わかりました、と足れる人は、たぶん、いません。
ぼく自身が、そうでした。
頭ではわかっても、こころは「もっと、もっと」と叫びつづける。だから今日は、精神論ではなくて、こころが少しだけ「足りている」に気づける、具体的な練習を、お渡ししたいんです。
かつてのぼくは、「足りない」の沼にいた
正直に打ち明けると、かつてのぼくは、「もっと」の権化みたいな人間でした。
起業して、売上が増えても、こころはちっとも満たされませんでした。100万円稼げば、次は200万。それが手に入れば、次は500万。ゴールが、どこまでも逃げていく。
手に入れた瞬間に、それは「あって当たり前」になって、また新しい「足りない」が顔を出す。
お金だけじゃありません。もっと評価を、もっと成功を、もっと、もっと。両手いっぱいに抱えても、こころには、いつも穴が空いていました。
その先に待っていたのは、ゆたかさではありませんでした。
走りすぎて、お酒や刺激に逃げるようになって。最後は、人と会うのもこわくなって、部屋から出られなくなった時期があります。
すべてを失いかけて、ようやく気づいたんです。
ぼくが追いかけていた「足りない」は、いくらお金を足しても、けっして埋まらない種類のものだったんだ、と。
「足りない」の正体は、たぶん「比べる」こと
少し立ち止まって、考えてみたいんです。
「足りない」と感じるとき、ぼくたちは、何と比べているのでしょう。
たいていは、自分以外のだれか、です。
あの人のほうが、いい暮らしをしている。あの人のほうが、稼いでいる。SNSをひらけば、もっと持っている人が、いくらでも目に入る。
その瞬間に、じゅうぶん足りていたはずの自分の手のなかが、急に「足りない」ものに見えてくる。
つまり、「足りない」は、お金の問題ではなくて、こころのクセなんです。
だったら。お金を足すよりも先に、その「比べるクセ」を、すこし手放してあげればいい。
それに、こうも思うんです。
ほんとうに「足りない」と困っているなら、不安は、行動のきっかけになります。家計を見なおしたり、稼ぎかたを工夫したり。それは、まっとうなこと。
でも、ぼくたちを苦しめている「足りない」の多くは、生活が立ちゆかない、という現実の話ではありません。
「あの人より下かもしれない」という、こころのざわめき。漠然とした、不安の影。それは、いくらお金を足しても、けっして黒字にならない種類の赤字なんです。
だから、向き合う相手をまちがえないでほしい。倒すべきは、残高の少なさではなくて、「比べてしまうクセ」のほうなんです。
今日できる、ちいさな一歩
足るを知るための、具体的な練習を、ふたつ。
ひとつ目は、「すでに、ある」を数える練習です。
寝る前に、今日「お金を使わずに」受け取ったものを、3つだけ思い出してみてください。あたたかい布団。蛇口をひねれば出てくる水。おいしかった一杯のお茶。
ぼくたちは、「これから手に入れたいもの」ばかり数えて、「もう手のなかにあるもの」を、ぜんぜん数えていません。「ある」を数えるだけで、こころの帳簿は、ふっと黒字になります。
ふたつ目は、「比べる入口」を、ひとつ閉じる練習です。
もし、見るたびに「足りない」が顔を出すSNSのアカウントがあるなら。今日、ひとつだけ、そっとミュートしてみる。
それは、逃げではありません。自分のこころを「足りない」の刺激から、すこし守ってあげる、やさしい引き算です。
お金を増やすことが、悪いわけではありません。
ただ、いくら足しても満たされないなら、足す前に、いちど「すでに、ある」を数えてみてほしいんです。
ほんとうのゆたかさは、残高の桁の数ではなくて、「これで、足りている」と思えるこころのなかに、静かにあるのだと、ぼくは思っています。
焦らず、比べず、背伸びせず。
今日もまた、自分のペースで、トコトコ歩いていきましょうね。
今夜、お金を使わずに受け取ったもの、あなたの手のなかには、いくつありますか。
