日曜日の朝。
ゆっくり眠れたはずなのに、目が覚めたとたん、こんな声が聞こえてきませんか。
「今日こそ、あれをやらなきゃ」
「せっかくの休みなのに、だらだらしていたら、もったいない」
休みの日まで、頭のなかの「やることリスト」に、追い立てられてしまう。何もしないでいると、なんだか落ちつかなくて、罪悪感さえ、わいてくる。
そんなあなたへ。
だいじょうぶ。あなただけじゃないですからね。
休むのが下手なのは、あなたが、まじめで、がんばり屋さんだからです。今日は、「何もしない」を、自分に許してあげる話を、させてください。
「何もしない」が、こわいのは
少し立ち止まって、考えてみたいんです。
なぜ、ぼくたちは、何もしないでいることに、こんなにも落ちつかないのでしょう。
ぼくが思うに、それは、ずっと「何かをしている自分」でいないと、価値がない気がしてしまうから。
役に立っていないと、いけない。生産的でないと、いけない。前に進んでいないと、いけない。
そんな思いこみが、こころの奥に、しみついている。だから、何もしていない時間が、まるで「無駄づかい」みたいに感じて、こわくなる。
でも、ほんとうに、そうでしょうか。
田んぼだって、ずっと作物を育てつづけたら、土がやせていきます。だから、ときどき、何も植えない時期をつくる。休ませる。そうすることで、また次の年、ゆたかに実る。
こころも、おなじだと思うんです。
何もしない時間は、無駄なのではなくて、次のために、こころを休ませている、大切な時間なんです。
かつてのぼくは、休むのが、いちばん下手だった
正直に打ち明けると、かつてのぼくは、休むことに、罪悪感のかたまりみたいな人間でした。
起業していたころは、一日でも休むと、置いていかれる気がして、こわかった。だれかが前に進んでいるあいだに、自分だけ立ち止まっている。そう思うと、いてもたってもいられませんでした。
だから、休みの日も、何かしていないと、落ちつかない。からだは休んでいても、頭のなかは、ずっと仕事のことを考えていました。
その先に待っていたのは、こころとからだの限界でした。
休まずに走りつづけて。お酒や刺激に逃げるようになって。最後は、人と会うのもこわくなって、部屋から出られなくなった時期があります。
皮肉なことに、ぼくは「休めなかった」せいで、いちばん長い「休み」に、入ることになってしまったんです。
動けなくなった部屋のなかで、ようやく気づきました。
ぼくは、走ることばかり覚えて、立ちどまることを、いちども、自分に許してこなかったな、と。
「だらけよう」と、言いたいわけではありません
こう書くと、何もせずに、だらだら過ごそう、という話に聞こえるかもしれません。
でも、ぼくが言いたいのは、そういうことではないんです。
何もしない、というのは、サボることではありません。
意識して、こころを休ませてあげる、立派な「ひとつの行為」なんです。
がんばることと同じくらい、休むことには、勇気がいります。とくに、まじめな人ほど、休むことに、後ろめたさを感じてしまう。
でも、しっかり休んだこころのほうが、あしたを、ずっと元気に歩けます。
休むことは、あしたのあなたへの、いちばんやさしい贈りものなんです。
禅の世界に、こんな言葉があります。
『閑古錐』(かんこすい)。
長く使われて、先のまるくなった、古い錐(きり)のこと。鋭さは失われているけれど、その丸みのなかに、若い錐にはない、深い味わいと、しずかな働きが宿っている、という意味です。
ぼくは、この言葉が、好きなんです。
いつも、とがっていなくていい。ばりばり成果を出して、人を切り裂くような鋭さだけが、価値ではない。
ときどき立ちどまって、何もしないでいる、あのまるい時間。それは、なまけているのではなくて、あなたという錐に、深い味わいを宿していく時間なんです。
何もしないことを、自分に許せる人は、ほんとうの強さと、やさしさを、すこしずつ手に入れていく。ぼくは、そう信じています。
今日できる、ちいさな一歩
もし、今日が日曜なら。あるいは、次のお休みの日に。
ひとつだけ、試してみてほしいことがあります。
一日のうち、ほんの30分でいいので、「何もしない時間」を、自分に予約してあげてください。
スマホも見ない。テレビもつけない。何かを「しよう」としない。
ただ、お茶を飲みながら、窓のそとをぼんやり眺める。横になって、天井を見る。雲が流れていくのを、ただ、見送る。
そして、罪悪感が顔を出したら、そっと、こう言ってあげてください。
「これは、サボりじゃない。あしたのための、大事な時間だよ」
たった30分です。
でも、その30分が、あなたのこころに、ふっと、すきまをつくってくれます。
何もしない時間を、自分に許せる人は、ほんとうは、いちばん強い人なんです。
ずっと走りつづけなくて、いいんです。
ときどき立ちどまって、こころに、ひとやすみさせてあげる。それは、あなたのこころが、長く、すこやかに歩いていくための、知恵なんですから。
焦らず、比べず、背伸びせず。
今日くらいは、何もしない自分を、まるごと許してあげてくださいね。
今度のお休みに、あなたは、「何もしない30分」を、自分にプレゼントできそうですか。
