月のはじめに、よくばらない目標をひとつだけ

六月の、いちばん最初の朝。あたらしい月がはじまると、それだけで、なにかを「やらなきゃ」という気持ちが、こころのどこかで起き上がってきませんか。

今月こそ、ちゃんとしよう。今月こそ、あれもこれも、片づけよう。手帳の新しいページをひらいて、まっさらなマス目を前に、ぐっと背筋をのばしてしまう。

その意気込みは、とてもうつくしいものだと思います。でも、もしあなたが、繊細でがんばり屋さんなら——月のはじめに立てた目標の多さに、月の終わりごろ、そっと押しつぶされてしまうことが、あるのではないでしょうか。

「今月もまた、ぜんぶはできなかった」そうやって、自分に小さくバツをつける。あたらしい月のはじまりが、いつのまにか、未達の罪悪感のスタートラインになってしまう。

そんなあなたへ。だいじょうぶ。あなただけじゃないですからね。

「足す」目標を、ひとつ「減らす」だけでいい

ぼくは、つみへらし、という生き方を大切にしています。足すより、手放す。こだわりや、とらわれを、すこしずつ減らしていく。それだけで、こころは、ふっと軽くなる。

月のはじめというのは、ぼくたちがいちばん「足したくなる」ときです。新しい習慣、新しい挑戦、新しい自分。あれもこれもと、両手いっぱいに荷物を抱えて、坂をのぼりはじめる。

でも、よく考えてみてください。両手がふさがったままでは、本当に大事なものを、つかむことができません。たくさんの目標は、ときに、いちばんやりたかったことすら、見えなくしてしまうんです。

だから、月のはじめにぼくが提案したいのは、こうです。目標を、ひとつだけにしぼる。そして、できれば、その目標は「なにかを増やす」ものではなく、「なにかを手放す」ものにしてみる。

たとえば。「毎朝はやく起きる」ではなく、「夜、スマホを見る時間をすこし手放す」。「もっと人に好かれる」ではなく、「嫌われたくない、という気持ちを、すこし手放す」。「成果を出す」ではなく、「焦る気持ちを、すこし手放す」。

減らす目標は、達成しても、両手が荷物でいっぱいになりません。むしろ、空いていきます。軽くなっていきます。

かつてのぼくは、足し算ばかりしていた

正直に打ち明けると、かつてのぼくは、足し算の天才みたいな人間でした。

起業して、毎月、新しい目標を立てて。あれもやる、これもやる、もっと、もっと、と。カレンダーを予定でびっしり埋めて、空白があると不安になるくらいでした。

がんばればがんばるほど、できることが増えていって、それが幸せなんだと、信じて疑いませんでした。

でも、その先に待っていたのは、ゆたかさではありませんでした。走りすぎて、お酒や刺激に逃げるようになって。最後は、人と会うのもこわくなって、部屋から出られなくなった時期がありました。

両手いっぱいに抱えた目標は、いつのまにか、ぼく自身を縛る鎖になっていたんです。あのとき、ぼくに足りなかったのは、もっとがんばる力ではありませんでした。そっと手放す、勇気のほうでした。

よくばらない、は、あきらめることじゃない

「目標をひとつにしぼる」というと、なんだか、夢を小さくするみたいで、さみしく感じる人もいるかもしれません。

でも、ぼくが言いたいのは、そういうことではないんです。

よくばらない、というのは、あきらめることではありません。いちばん大切なものを、ちゃんと選ぶ、ということです。

たくさんの灯りを、ぜんぶ中途半端にともすより。ひとつの灯りを、しっかりと、あたたかくともす。そのほうが、あなたの六月は、ずっと深く、あたたかくなる気がするんです。

ひとつにしぼると、ほかが「見えてくる」

ふしぎなことに、目標をひとつにしぼると、捨てたはずのほかのことが、よく見えるようになります。

たくさんのことを同時に追いかけているときは、視界が、ぼやけています。あれもこれもと気が散って、結局、どれにも、ちゃんと向き合えていない。でも、「今月は、これだけ」と決めた瞬間、不思議と、こころのピントが、すっと合うんです。

そして、いちばん大切なひとつに向き合っているうちに、ほかのことも、なぜか、ついでにすこしずつ進んでいたりする。あれもこれもと力んでいたときには、できなかったことが、です。

ひとつにしぼるのは、ほかをあきらめることではなくて、ぜんぶを、ゆるやかに前へすすめるための、いちばんの近道なのかもしれません。

今日できる、小さな一歩

月のはじめの今日、3分だけ、こんなワークをしてみませんか。

① 紙を一枚、用意する。スマホのメモでもかまいません。

② 今月、やりたいことを、思いつくまま、ぜんぶ書き出す。増やしたいこと、がんばりたいこと、なんでもいい。

③ そのなかから、たったひとつだけ、丸をつける。「これだけは、大切にしたい」というものに。できれば、それを「〜を手放す」という言葉に、書きかえてみる。

残りは、消さなくていいんです。ただ、今月は「丸をつけたひとつ」だけを、そっと胸に抱いて歩く。それだけで、じゅうぶんです。

焦らず、比べず、よくばらず。ひとつの灯りを、大切に。あなたの六月が、軽やかな一歩からはじまりますように。

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