ふとした夜に、お金のことを考えはじめると、こころが、ざわざわとしてくる。
そんなこと、ありませんか。
このままで、だいじょうぶなんだろうか。貯金は、足りているんだろうか。あの人は、もっと稼いでいるのに、自分は——。
はっきりした理由があるわけでもないのに、お金のことを思うと、胸のあたりが、もやっと重くなる。そして、その正体がわからないまま、なんとなく不安なだけで、夜がふけていく。
そんなあなたへ。だいじょうぶ。あなただけじゃないですからね。
お金の不安は、たいてい「ぼんやり」している
ぼくが、自分の経験からひとつ言えるのは、お金の不安というのは、たいてい「ぼんやり」したまま、こころのなかをグルグル回っている、ということです。
「お金が足りないかも」という思いは、ふしぎなことに、具体的な数字とセットになっていないことが、ほとんどなんです。いくら入ってきて、いくら出ていって、いま、いくら手元にあるのか。そこをはっきり見ないまま、「なんとなく、足りない気がする」という気分だけが、ふくらんでいく。
ぼんやりした不安ほど、こころを重くするものはありません。正体がわからないものを、ぼくたちは、いちばんこわがるからです。
だから、月のはじめの今日は、その「ぼんやり」を、いちど、紙の上におろしてみませんか。ふくらんだ不安の風船を、しぼませて、ただの数字に、もどしてあげる。
「見える化」は、貯めるためじゃなく、安心するため
家計を見直す、というと、なんだか「もっと節約しなさい」「もっと貯めなさい」と言われている気がして、気が重くなる人もいると思います。
でも、ぼくが今日おすすめしたい家計リセットは、貯めるためのものでは、ありません。あなたが、安心して眠るための、こころの整理です。
お金の見える化のいちばんの効能は、お金が増えることではなくて、「わからない」が「わかる」に変わることなんです。
わかってしまえば、不安は、ぐっと小さくなります。たとえ、数字がきびしくても。「ぼんやりこわい」よりは、「ここがきびしい、とわかっている」ほうが、人はずっと、おだやかにいられるものですから。
かつてのぼくは、数字から目をそらしていた
正直に打ち明けると、いちばんしんどかった時期のぼくは、お金の数字を、まったく見ていませんでした。
見るのが、こわかったんです。通帳をひらくのも、明細をたしかめるのも、ぜんぶ、先延ばしにして。「見なければ、なかったことにできる」みたいな気持ちで、現実から目をそらしていました。
でも、目をそらしているあいだも、不安だけは、ずっとこころに居座っていました。むしろ、見ないからこそ、不安は、どんどん大きく育っていったんです。
ようやく、こわごわ数字と向き合ったとき。たしかに、現実はきびしかった。でも、それと同時に、ふしぎと、こころが、すこし軽くなったのを覚えています。ぼんやりした巨大な恐怖が、ちゃんと、手で扱える大きさの「課題」に、変わったからです。
今日できる、小さな一歩
がんばって完璧な家計簿をつける必要は、ありません。3分でできる、ちいさな家計リセットを、お渡しします。
① 今の「残高」を、ひとつだけ、見る。銀行アプリでも、通帳でもいい。いま、自分の手元にいくらあるのか。その数字を、ただ、見る。こわくても、十秒、ながめる。
② 今月、必ず出ていくお金を、3つだけ書く。家賃、光熱費、スマホ代——大きいものから、3つだけ。ぜんぶ書こうとしなくて、だいじょうぶ。大きな3つが見えれば、輪郭がつかめます。
③ 残高から、その3つを引いてみる。出てきた数字を、ただ、ながめる。それが、いまのあなたの「ほんとうの手ざわり」です。気分ではなく、数字の手ざわり。
たったこれだけで、「ぼんやりこわい」が、すこし「わかる」に変わります。
「足りない」と「ない」は、ちがう
もうひとつ、お伝えしたいことがあります。
お金の不安のなかには、ほんとうは「足りない」わけではないのに、「足りない気がする」だけ、というものが、かなり混ざっています。
まわりと比べて、足りない気がする。SNSで見た暮らしと比べて、足りない気がする。将来を思って、足りない気がする。
でも、その「足りない」は、いまのあなたの暮らしを、ほんとうに、おびやかしているでしょうか。今日のごはんがあって、眠る場所があって、あしたを迎えられる。それは、「ない」ではなく、ちゃんと「ある」状態です。
数字を見るというのは、「足りないのか、足りている気がしないだけなのか」を、わけてあげる作業でもあります。比べることでふくらんだ「気がするだけの不足」は、数字の前では、すこし、しぼんでくれますから。
不安を、手放すために、いちど見る
お金の不安を手放す、というのは、お金のことを考えないようにする、ということでは、ありません。
むしろ、逆です。いちど、ちゃんと見る。数字におろす。輪郭をつかむ。そうやって「わかった」あとに、ようやく、ぼくたちは、安心して、お金のことを横に置けるようになる。
見ないまま手放そうとすると、不安は、ずっと追いかけてきます。でも、いちど見て、わかってしまえば。あとは、淡々と、今日という一日を生きていけばいいだけです。
焦らず、比べず、目をそらさず。今月の最初の今日、ほんの十秒だけ、数字と向き合ってみる。それだけで、あなたの夜は、すこしだけ、おだやかになりますから。
