「会社の人間関係に、ほとほと疲れました。苦手な人がいるわけでも、いじめがあるわけでもない。それなのに、人と関わるだけで、どっと消耗してしまう。金曜の夜になると、一週間ぶんの気づかれで、こころがからっぽです。こんな自分は、社会人として、おかしいのでしょうか」
——きょうは、こんなお悩みに、そっとお答えするかたちで、お話しさせてください。
まず、はじめに。おかしくなんて、ないですからね。むしろ、それだけ人に気をくばれる、やさしさの証拠だと、ぼくは思っています。
そんなあなたへ。だいじょうぶ。あなただけじゃないですからね。
疲れているのは、「気づかいの量」が多いから
人間関係で消耗する人は、たいてい、こころのなかで、すごい量の仕事をしています。
あの人は、今、機嫌がいいかな。この言い方で、傷つけなかったかな。場の空気が、よどんでいないかな。
そうやって、口には出さないところで、たくさんのアンテナを立てて、たくさんのことを感じとっている。だから、たいした出来事がなくても、一日の終わりには、こころがくたくたになる。
これは、あなたが弱いからでは、ありません。あなたのこころが、人一倍こまやかで、人一倍やさしいから、起きていることなんです。
繊細な人は、ふつうに過ごしているだけで、ほかの人の何倍も、感情の情報を受けとっています。だから、疲れて、あたりまえ。むしろ、そこまで気づいてあげているあなたは、ほんとうに、よくがんばっています。
「全員と、うまくやろう」を、そっと手放す
では、どうすればいいのか。
ぼくがお伝えしたいのは、「もっと強くなりましょう」でも「気にしないようにしましょう」でも、ありません。そんなのは、できたら苦労しませんよね。
そうではなくて。「全員と、うまくやろう」という、その荷物を、すこしだけ、おろしてみませんか、ということです。
繊細でやさしい人は、無意識のうちに、その場にいる全員に、まんべんなく気をくばろうとします。苦手な人にも、どうでもいい人にも、ぜんぶに、おなじだけのこころを割いてしまう。
でも、ぼくたちのこころのエネルギーは、有限です。全員にくばろうとすれば、いちばん大切にしたい人にすら、ちゃんと向き合えなくなってしまう。
だから、つみへらし。「全員と、うまくやらなきゃ」を、手放す。ほんの数人——あなたが、ほんとうに大切にしたい人にだけ、こころを向ける、と決める。
あとの人とは、「ふつうに、感じよく」。それで、じゅうぶんです。好かれなくても、いいんです。
かつてのぼくは、全員に好かれようとしていた
正直に打ち明けると、かつてのぼくは、全員に好かれたい人間でした。
嫌われるのが、こわくて。その場の全員に、いい顔をして。本音を押し殺して、まわりの顔色ばかり、うかがって生きていました。
がんばって、がんばって、みんなに好かれようとして。でも、その先にあったのは、ゆたかな人間関係ではありませんでした。だれにも本音を見せられない孤独と、消耗だけが残って。最後は、人と会うことそのものがこわくなって、部屋に引きこもった時期があります。
全員に好かれようとすることは、じつは、だれともほんとうにはつながれない道だったんです。
そのことに気づいてから、ぼくは、こころを向ける相手を、そっと選ぶようになりました。すると、ふしぎと、人間関係が、ずっと、らくになったんです。
「嫌われない」より、「自分を、すり減らさない」
全員に好かれようとすることの、ほんとうのこわさは、いつのまにか、自分の本音が、どこにあるのか、わからなくなってしまうことです。
相手に合わせて、笑って。波風を立てないように、のみこんで。それを続けているうちに、「自分は、どう感じているのか」が、見えなくなっていく。
人間関係に疲れた、というあなたの感覚は、じつは、すごく大事なサインです。「これ以上、自分をすり減らさないで」という、こころからの、せいいっぱいのSOS。
だから、目指すのは「嫌われないこと」ではなくて、「自分を、すり減らさないこと」。すこしくらい、感じの悪い人だと思われても、いいんです。あなたのこころが、すり切れてしまうより、ずっと、いいんですから。
今日できる、小さな一歩
金曜の夜の、3分でできる、こころの整理を、ひとつ。
① 一週間で、いちばん消耗した「気づかい」を、ひとつ思い出す。だれかに、こころを割きすぎたな、という場面を。
② それを、「この人は、ふつうに感じよくで、じゅうぶんだった」と、言いかえてみる。全力で気をくばらなくてよかったんだ、と、自分にゆるしを出してあげる。
③ 最後に、ほんとうに大切にしたい人を、ひとり、思いうかべる。その人に、来週、ほんの少しだけ、こころを多めに向けよう、と決める。
これだけで、来週の人づきあいの「配分」が、すこし、らくになります。
金曜の夜は、いちばん、こころが疲れている時間です。今日くらいは、だれにも気をつかわなくて、いいんです。あたたかいお茶でもいれて、自分のためだけに、ゆっくり呼吸してください。
焦らず、比べず、全員に好かれようとせず。あなたのこころは、いちばん大切な人のために、そっととっておきましょうね。
