ボーナスの日に、こころがざわついたあなたへ

ボーナスが入ったのに、なぜか、こころが晴れない。

そんなこと、ありませんか。

通帳の数字は、たしかに増えた。うれしいはずなのに、どこか、そわそわする。「これ、何に使おう」と考えはじめると、楽しいような、苦しいような、へんな気持ちになる。

増えたのに、ざわつく。そんな自分が、よくわからなくて、すこし疲れてしまう。

そんなあなたへ。だいじょうぶ。あなただけじゃないですからね。

増えたのに、満たされなかった

正直に打ち明けると、かつてのぼくは、「増える」ことに取りつかれていました。

起業して、走って、走って。お金が入るたび、つかのま、ほっとする。でも、その安心は、いつも、ほんの数日でした。

数字が増えると、なぜか、もっと増やさなきゃと焦る。減るのがこわくなる。「これだけあっても、まだ足りない」という声が、こころのなかで、ずっと鳴っていました。

入ってきたお金で、新しいものを買う。買った瞬間は、たしかに気持ちがいい。でも、しばらくすると、その高揚はすうっと引いて、また次の「もっと」を探している。

あのころのぼくは、お金を持っているようで、ほんとうは、お金に持たれていたんだと思います。増やすことが、いつのまにか、お酒や刺激と同じ「逃げ場」になっていました。

ボーナスがざわつかせるのは、お金じゃない

なぜ、増えたはずなのに、こころがざわつくのか。

ぼくの場合、それは、お金そのものの問題ではありませんでした。

ボーナスが入ると、ふだん見ないようにしていた問いが、いっせいに顔を出すんです。

「これだけのお金に、見合う働きを、自分はできているだろうか」。「使ったら、また足りなくなるんじゃないか」。「あの人は、もっともらっているんだろうな」。

ざわつきの正体は、お金じゃなくて。お金にくっついてくる、不安や、比べるこころや、自分への評価のほうだったんです。

数字が動くと、ふだん静かにしていたこころの天気が、いっせいに揺れる。それだけのことなんだと、いまは思います。

おもしろいもので、ボーナスは、その人がふだん何にこころを使っているかを、そっと映し出す鏡みたいなものでした。不安の強い人には、不安が。比べグセのある人には、劣等感が。お金が入ると、それらがいっせいに、表に出てくる。つまり、ざわつきは、お金が連れてきたものではなくて、もともとあなたのなかにあったものが、お金をきっかけに、すがたを見せただけなんです。

足し算ではなく、引き算でながめてみる

だから、ボーナスの日は、「何を増やそう」ではなくて、「何を、そっと手放そう」と考えてみるのも、ひとつだと思っています。

ぜんぶ使い切らなきゃ、もったいない、という焦りを、手放す。人と比べて、多い少ないを測るものさしを、いったん、置く。「お金が増えれば、こころも軽くなるはずだ」という思い込みも、ながめてみる。

つみへらし——足すより、減らす。お金そのものより、お金にまとわりついた「こころのざわつき」のほうを、ひとつずつ、減らしていく。

そうすると不思議と、おなじ金額が、すこし、あたたかく見えてきたりします。

これは、「お金を使うな」「ぜいたくはいけない」という話では、まったくありません。おいしいものを食べてもいい。ほしかったものを、買ってもいい。

ただ、その一回を、「ざわつきから逃げるため」ではなく、「ちゃんと、味わうため」に使えたら。おなじ一万円でも、こころへの効きかたが、ぜんぜん違ってくるんです。

今日できる、小さな一歩

むずかしい家計術は、いりません。ボーナスが入ったら、3分でできる、小さなワークをひとつ。

① 紙でもスマホのメモでもいいので、まんなかに「ありがとう」と書いてみる。このお金は、自分の半年ぶんのがんばりへの、おつかれさまでもありますから。

② そのうえで、金額の「一部」だけを、こう分けてみる。「自分を、ちゃんと喜ばせるためのお金」を、ほんの少しでいいので、はっきり取り分ける。

③ 残りは、いったん「考えない」と決めて、ふたを閉じる。ぜんぶの使い道を、今日決めなくていい。ざわつきは、急いで答えを出そうとするから、大きくなりますから。

たったこれだけです。

うまく分けられなくても、だいじょうぶ。「ざわついたな」と気づけたこと自体が、もう、ひとつの引き算ですから。

数字が、こころを決めるわけじゃない

増やすことに取りつかれていたころのぼくは、いつも、こころが乾いていました。何を手に入れても満たされなくて、また次の「もっと」を探していました。

でも、ほんとうにぼくのこころを潤してくれたのは、数字の大きさではありませんでした。へったお金より、減らせたざわつきのほうが、ずっと、ぼくを軽くしてくれたんです。

だから、もしあなたが今日、増えた数字を前にざわついていても。そのざわつきを、急いで消そうとしなくて、だいじょうぶ。

それは、あなたがお金に、まじめに向き合っている証拠ですから。

焦らず、比べず、増やそうとしすぎず。今日という一日を、いまある分で、いとおしんでいきましょうね。

きっと、だいじょうぶ。数字は、あなたの価値を、決めたりしませんから。

Share

X Facebook LINE

お金

月末は、お金より気持ちを整える。数字をひらく前の、ひと呼吸の話

月末が近づくと、通帳や家計簿アプリをひらくのが、少しこわくなりませんか? 数字をみて、ズーンと落ち込む。 「今月も使いすぎた」「なんでこんなに残っていないんだろう」と、じぶんを責めはじめる。

お金

足りないより、こわいのは「比べる」こと。〜お金の不安の、ほんとうの正体〜

通帳の残高そのものより、誰かのキラキラした投稿を見た瞬間に、胸がザワッとしたことはありませんか? ほんとうは今月もなんとかなっているのに、同世代の年収の話を聞いたとたん、急に自分が「足りていない」気がしてきたことは、あり…

お金

帰省の出費に、うしろめたくならない──お金に「名前」をつけるという小さな工夫

帰省のたびに、お財布とこころが、いっしょにすり減っていく気がすることはありませんか? 新幹線代に、手土産に、みんなでの外食に、子どもたちへのお小遣い。 気づけば、けっこうな金額になっていて。