今日は、父の日。そして、一年でいちばん昼が長い、夏至の日でもあります。
光がいちばん満ちる、この特別な一日に。すこし、立ちどまってみませんか。
いつもなら、あわただしく過ぎていく一日。でも今日くらいは、いつもの「当たり前」に、そっと目を向けてみたいんです。
「ありがとう」が、言いにくい人へ
父の日に、お父さんに「ありがとう」と言えますか。
素直に言える人も、いると思います。でも、こころのどこかが、ざわつく人も、きっといますよね。
もう、言える相手がいない人。わかり合えないまま、距離ができてしまった人。うまく甘えられないまま、大人になった人。
「父の日です、感謝しましょう」と言われても、そんなに簡単じゃない。ぼくも、そうでした。だから、無理に「ありがとう」と言わなくても、いいと思っています。
その代わりに、今日は。人ひとりに向けるのがむずかしければ、もっと大きな「当たり前」のほうに、目を向けてみませんか。
世界は、見えない支え合いでできている
禅や東洋の知恵に、『相利共生』(そうりきょうせい)という考え方があります。
少しむずかしいですが、生きものたちが、たがいに支え合いながら、いっしょに生きている、という意味です。花とミツバチ。木と土のなかの菌。どちらかが一方的に得をするのではなく、たがいに、なくてはならない関係で結ばれている。
ぼくたちの毎日も、じつは、そうやってできています。
今朝あなたが飲んだお茶の一杯。その茶葉を育てた人、摘んだ人、運んだ人がいる。雨を降らせた空があり、土があり、太陽があった。夏至の、この長い光も、何億年も、ただ、降りそそぎ続けてくれている。
あなたが今日、生きていられるのは。数えきれないほどの「当たり前」に、支えられているからなんですよね。
電車が時間どおりに来ること。蛇口をひねれば、水が出ること。夜、屋根の下で、安心して眠れること。ぜんぶ、誰かが、どこかで、ささえてくれている。
ふだんは、それに気づきません。当たり前すぎて、見えなくなっている。むしろ、当たり前が、ひとつ欠けたときだけ、ぼくたちは、はじめてそのありがたさに気づく。でも、ほんとうは、欠ける前から、ぜんぶ、ありがたいことだったんです。
ぼくが、当たり前のありがたさを知った場所
正直に打ち明けると、ぼくが「当たり前」のありがたさを知ったのは、いちばんどん底にいたときでした。
起業して、走って、走って。うまくいっていたころは、何ひとつ、ありがたいと思っていませんでした。ぜんぶ、自分の力で手に入れた。そう、思いこんでいました。
そのうち、お酒や刺激に逃げて、最後は部屋に引きこもりました。
人に会えなくなって、外にも出られなくなって。そんなぼくに、それでも、毎日ごはんが届いて。心配して、声をかけてくれる人がいて。朝になれば、ちゃんと光が差してくる。
何もできない自分が、それでも生かされている。そのことに気づいたとき、はじめて、こころの底から「ありがたいな」と、思えたんです。
当たり前は、当たり前じゃなかった。失って、欠けて、はじめて。ぼくは、ずっと支えられていたことに、気づきました。
手を合わせる、というかたち
「感謝しなきゃ」と気負うと、かえって苦しくなります。だから今日は、もっとしずかな方法を、ひとつ。
それは、ただ、手を合わせること。
誰に、というわけでなくても、いいんです。お父さんに。亡くなった人に。育ててくれた人に。あるいは、空に。光に。今日まで生きてきた、自分自身に。
手のひらと手のひらを、そっと合わせる。それだけで、こころが、ふっと整います。言葉にならない「ありがとう」を、からだのかたちにする。それが、手を合わせる、ということなんだと思います。
今日できる、小さな一歩
父の日と夏至の、この節目に。3分くらいでできる、小さなワークを、ひとつ。
① 窓のそばに立って、今日の光を、すこしあびる。夏至の、一年でいちばん長い光です。あびながら、深呼吸をひとつ。
② 今日まで、自分を支えてくれた「当たり前」を、ひとつだけ思い浮かべる。人でも、ものでも、空でもいい。あなたが「あって当たり前」と思っていた、なにか。
③ 静かに、手を合わせる。言葉は、いりません。ただ、こころのなかで「ありがとう」とつぶやくだけ。
たったこれだけです。うまく感謝できなくても、だいじょうぶ。手を合わせた、その時間が、もう、じゅうぶん尊いですから。
光がいちばん満ちる日に
夏至を過ぎると、昼は、すこしずつ短くなっていきます。
それでも、今日。一年でいちばん満ちた光のなかで、ぼくたちは、たしかに生かされています。数えきれない「当たり前」に、支えられて。
その当たり前は、ほんとうは、奇跡みたいなことの連なりでした。
焦らず、比べず、感謝を強いることもせず。ただ、今日の光のなかで、そっと手を合わせて。自分を支えてくれたすべてに、しずかに、頭をさげてみましょうね。
だいじょうぶ。あなたは、ひとりで生きてきたんじゃない。たくさんの当たり前に、ずっと、抱かれてきたんですから。
