半年に一度くらいは、お金のことを、ちゃんと見つめなきゃ。
そう思いながら、家計簿のアプリも、通帳も、なんとなく、見て見ぬふりをしていませんか。
数字を見るのが、こわい。思ったより、貯まっていなかったら。使いすぎが、見つかったら。
だから、見ないことにして、お金のモヤモヤを、こころの隅に、そっと押し込んでいる。
そんなあなたへ。だいじょうぶ。あなただけじゃないですからね。
きょうは、上半期のお金を棚卸しする、その前に。お金を見る「物差し」の話を、すこしだけ、させてください。
お金の不安は、増やすことでは消えない
お金のモヤモヤを、ぼくたちはつい、「もっと貯めれば」「もっと稼げば」消えると思いがちです。
でも、ふしぎなことに、お金は、増やせば増やすほど、不安も、いっしょに大きくなったりするんです。
百万円貯まれば、「これを減らしたくない」という不安が生まれる。一千万円貯まれば、「もっと増やさなきゃ」という焦りが生まれる。
足し算で、不安を消そうとするかぎり、ゴールは、どこまでも逃げていく。
なぜなら、お金の不安の正体は、お金そのものじゃなくて、「足りない」と感じる、こころのクセのほうだからです。
ここを、増やすことだけで埋めようとすると、いつまでたっても、満たされません。
かつてのぼくは、稼いでも、渇いていた
正直に打ち明けると、かつてのぼくは、お金を稼げば、しあわせになれると、信じていました。
起業して、もっと、もっとと、走って。数字が増えていくのが、自分の価値が上がっていくみたいで、うれしかった。
でも、口座の残高が増えても、こころの渇きは、ぜんぜん、いやされませんでした。
むしろ、増えれば増えるほど、それを失うのがこわくなって。次は、もっと大きな数字を目指して。気づけば、お金のために、こころとからだを、すり減らしていました。
最後は、刺激に逃げて、人に会えなくなって、引きこもった時期もありました。
たくさん持っていたはずなのに、あのころのぼくは、世界でいちばん、こころが貧しかったように思います。
『吾唯足知』
少しむずかしい言葉ですが、お金の棚卸しの前に、そっと置いておきたい禅語があります。
『吾唯足知』(われただたるをしる)。
「足ることを知る者は、こころ豊かである」という、禅の教えです。京都の龍安寺に、この四文字をかたどった、まあるい手水鉢があることでも、知られています。
これは、「お金を欲しがるな、ぜいたくをするな」という、がまんの教えでは、ないとぼくは思っています。
そうではなくて、「いま、自分の手のなかにあるものに、ちゃんと気づこうね」という、まなざしの話。
足るを知るというのは、上を見て、足りないものを数えるのを、いったんやめて。自分の足もとにある、ささやかな彩りに、目を向けること。
その物差しで見ると、お金の棚卸しが、自分を責める時間じゃなくて、自分の手もとを、いとおしむ時間に変わります。
今日できる、小さな一歩
むずかしい家計分析は、いりません。きょう、3分でできる、つみへらし式の棚卸しを、ひとつ。
① この半年で使ったお金のなかから、「これは、買ってよかった」と思える出費を、ひとつだけ、思い出してみてください。金額の大小は、関係ありません。
② 次に、「これは、いらなかったかも」と思える出費を、ひとつだけ。これも、責めるためじゃなくて、ただ、見つけるだけ。
③ 最後に、こう考えてみる。「後半は、買ってよかったものに、ちょっと寄せていこう」と。
これだけです。減らすことが目的じゃありません。自分にとっての「ゆたかさ」が、どこにあるのかを、見つけるためのワークです。
ほんとうに自分を満たすものに、お金を使う。他人の目のための出費を、そっと手放す。それが、つみへらし式の、お金との、おだやかなつき合い方です。
お金は、ゆたかさの、ほんの一部
お金は、大事です。それは、まちがいありません。
でも、お金は、あなたのゆたかさの、ぜんぶではなくて、ほんの一部。
口座の残高が、思ったより少なくても、それであなたの価値が、決まるわけじゃない。
あなたのまわりには、お金では買えない彩りが、きっと、たくさんあります。朝のコーヒーの香り。だれかの、何げないやさしさ。今日の空の色。
そういう、足もとのゆたかさに気づけたとき、お金の不安は、すこしだけ、軽くなります。
お金を、ふやすことばかりに、こころを向けていると、いつのまにか、お金に「使われる」ようになってしまいます。減るのがこわくて、使えない。ふやさなきゃと、休めない。それでは、なんのためのお金か、わからなくなってしまいますよね。
お金は、こころ穏やかに生きるための、道具のひとつ。主役は、あくまで、あなたのくらしと、こころのほうです。その順番を、ときどき、思い出してあげてください。
焦らず、比べず、足りないを数えず。後半も、自分にとってのゆたかさを、ひとつずつ確かめながら、トコトコ歩いていきましょうね。
