うまい・へたの、ものさしを置いたら、その人の彩りだけが残った

うまくできたか、どうか。

一日の終わりに、そんなものさしで、じぶんを測っていませんか?

仕事が速いあの人と、じぶんを比べて。

器用にこなすあの人と、じぶんを比べて。

きょうもまた、ため息をひとつ。

そんなあなたへ。

月のはじめのきょうは、この言葉をそっと置かせてください。

うまい・へたの、ものさしは、いらない。

ぼくはいま、障害のある人たちが働く場所に関わっています。

そこでは、いろんな人が、いろんなペースで手を動かしています。

黙々と、じぶんの世界に集中する人。

ゆっくり、じぶんの呼吸で進める人。

きょうは調子が出ないなあ、と少し休む人。

その景色をながめていると、ふしぎと、こころがほどけていくんです。

でも正直にいうと、関わりはじめたころのぼくは、まだ古いものさしを握りしめていました。

どうしたらもっと速くできるだろう。

どうしたらもっと上手になるだろう。

かつて事業をやっていたころのクセが、なかなか抜けなかったんですね。

ぼくはむかし、成果と数字のものさしで、じぶんを測りつづけていました。

がんばっても、がんばっても、目盛りはいつも「まだ足りない」を指していて。

その先で、こころもからだもボキッと折れて、長いあいだ、部屋から出られない時期を過ごしました。

部屋にこもっていたあいだも、ぼくはまだ、じぶんを測るのをやめられませんでした。

働いていない、0点。

人と会えない、0点。

ものさしだけが、最後まで手元に残っていたんです。

あれを手放すのに、ずいぶん時間がかかりました。

ものさしって、便利なようでいて、ときどき人を刺すんです。

思えば、ぼくたちはずっと測られて生きてきました。

学校では点数で。

仕事では成果で。

SNSでは数字で。

測られることに慣れすぎて、いつのまにか、じぶんで、じぶんを測るようになってしまった。

しかも、じぶんに向けるものさしは、他人に向けるものより、ずっと厳しくなりがちです。

友だちが失敗したら「そんな日もあるよ」と言えるのに。

じぶんが失敗したときは、「なんでこんなこともできないの」と責めてしまう。

やさしいあなたほど、その傾向は強いかもしれません。

だからこそ、いまの場所で教えてもらったことがあります。

うまい・へたの、その手前に。

「その人が、その人として、そこにいる」という、なによりだいじなことがある。

ゆっくりでも、じぶんのペースで手を動かす時間。

きのうできなかったことが、きょう少しだけできたよろこび。

できあがったものに宿る、その人にしか出せない、いろ。

そこにあるのは優劣ではなくて、彩りでした。

You can be any color you want.

あなたは、あなたのいろでいい。

ぼくはこの言葉を、じぶんの芯に置いています。

どんないろにも、なっていい。

そして、どのいろにも、上も下もありません。

赤が青より優れている、なんてことがないように。

あなたのいろと、あの人のいろにも、優劣なんてないんです。

あるのは、ちがい。

そして、ちがいは、ならべると彩りになります。

もちろん、ものさしを全部捨てましょう、と言いたいわけではありません。

測ることが役に立つ場面も、たしかにありますから。

うまくなりたい、という気持ちそのものは、とても健やかなものです。

練習して、きのうより少しできるようになるよろこびも、たしかにあります。

ただ。

じぶんの価値まで、そのものさしで測らなくていい。

働くことのまんなかには、優劣じゃなくて、その人らしさがあっていい。

うまい・へたで人がふるいにかけられない場所が、この社会に少しずつ増えていったらいいな。

ぼくは、そんな未来が見たくて、きょうも現場に立っています。

そしてこれは、働く場所だけの話ではなくて。

あなたの毎日にも、そのまま置ける話だと思うんです。

きょう、うまくやれなかったこと。

人より時間がかかってしまったこと。

それは、あなたの価値の話ではありません。

ただの、出来事の話です。

出来事と価値を、そっと切り離す。

それができた日から、毎日は少しずつ、呼吸がしやすくなっていきます。

さいごに、今日の小さな一歩を。

寝る前に3分だけ、きょうのじぶんを「うまい・へた」抜きでふり返ってみてください。

①きょう、じぶんがやったことをひとつ思い出す

②「うまくできたか」ではなく「どんな気持ちでやったか」だけをながめる

③「きょうも、じぶんのいろでやれたね」と、ひとこと声をかける

それだけで、じゅうぶんです。

「たのしかった」「くやしかった」「ホッとした」。

どんな気持ちが出てきても、ぜんぶ正解です。

気持ちに、うまい・へたはありませんから。

焦らず、比べず、背伸びせず。

あなたの彩りは、測らなくても、ちゃんとそこにありますから。

きょうもまた、じぶんらしいペースで、トコトコ歩いていきましょうね。

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