家族には、うまく甘えられないあなたへ──いちばん近い人が、いちばん遠い夜に

ほんとうは「疲れた」と言いたいのに、実家ではつい「元気だよ」と笑ってしまう。

そんなこと、ありませんか?

ほんとうは頼りたいのに、「だいじょうぶ、自分でやるから」が口ぐせになっている。

家族の輪のなかにいるのに、なぜだかひとりで気を張っている。

お盆のこの時期、そんな自分にちょっと疲れてしまったあなたへ。

だいじょうぶ。

あなただけじゃないですからね。

◆甘えられないのは、冷たいからじゃない

先に、芯になる言葉を置いておきます。

家族にうまく甘えられないのは、家族が嫌いだからでも、あなたが冷たいからでもありません。

近すぎるからこそ、心配をかけたくない。

期待されているからこそ、がっかりされたくない。

長年つとめてきた「しっかり者」の役を、いまさらおりられない。

甘え下手は、やさしさとがんばりの、副作用なんです。

あなたがやさしくて、がんばり屋さんだからこそ、甘えられない。

順番として、そうなっているだけなんですね。

◆いちばん近い人にこそ、言えなかった

どん底にいたころのぼくが、いちばん弱音を吐けなかったのは、いちばん近い人たちでした。

不思議なもので、すこし遠い人には話せるのに、近い人にはこそ、言えないんです。

心配を、かけたくない。

これまでの自分のイメージを、壊したくない。

「あなたなら平気でしょ」という空気を、裏切れない。

そうやって、いちばん近くにいる人の前で、いちばん分厚いヨロイを着ていました。

笑って、平気なふりをして、ひとりの部屋に戻ってから、どっと疲れる。

でも、あとになって思うのです。

ヨロイの内側で、ぼくはずっと、気づいてほしかったんだと。

「元気だよ」と笑いながら、こころのどこかで、「その笑顔のうそを、見抜いてほしい」と願っている。

われながら、ずいぶん面倒くさいなと思います。

でも、甘え下手の人のこころのなかでは、きっと似たようなことが起きているんじゃないでしょうか。

言えない。

でも、気づいてほしい。

でも、気づかれたら気づかれたで、「だいじょうぶだよ」と笑ってしまう。

このループを、意志の力だけで抜けるのは、なかなかむずかしいものです。

だからこそ、練習が要るのだと思います。

ヨロイを一気に脱ぐ練習ではなくて、ボタンをひとつだけ外す練習が。

◆甘えるとは、重さを分けること

甘える、というと、寄りかかって相手を潰してしまうようなイメージがあるかもしれません。

でも、ほんとうの甘えは、そうじゃないと思うのです。

甘えるとは、抱えている重さを、すこしだけ分けること。

荷物をまるごと預けるのではなくて、袋の持ち手の片方を、持ってもらうこと。

相手には、あなたが思っているよりも、その余白があります。

そして、頼られることは、多くの場合、迷惑ではなくて、うれしいことだったりします。

あなたも、大切な人から小さなお願いをされたら、ちょっとうれしくないですか?

それと、同じです。

あなたが甘えることは、相手への負担ではなくて、信頼のプレゼントにもなるんですね。

それでも、こわいですよね。

「断られたら、どうしよう」

「迷惑そうな顔をされたら、立ち直れない」

その気持ちも、よく分かります。

だから、最初のお願いは、断られてもへいきなくらい、小さなものでいいのです。

お茶をつぐくらいのお願いなら、たとえ「いまちょっと手が離せない」と言われても、こころは折れません。

小さなお願いで、「頼っても、だいじょうぶだった」という経験を、ひとつずつ貯めていく。

甘えは才能ではなくて、貯金みたいなものだと、ぼくは思っています。

◆今日の小さな一歩

甘える練習は、大きな告白から始めなくていいのです。

「お茶、ついでにもらえる?」

「ちょっとこれ、持ってもらえる?」

「ねえ、5分だけ話きいて」

そんな、小さなお願いをひとつだけ。

それでもハードルが高ければ、「ありがとう」を、いつもよりひとつ多く言うだけでもいい。

甘えることと感謝することは、じつはよく似た筋肉を使いますから。

「ありがとう」を受け取った相手は、すこしうれしくなります。

そのうれしさが、次にあなたがお願いをするときの、やわらかい下地になってくれます。

遠回りに見えて、じつはいちばんの近道かもしれません。

そして、もし言えなかったら。

言えなかった自分に気づけただけで、きょうは花マルです。

甘え下手は、一日では変わりません。

でも、変わる必要も、ほんとうはないのかもしれません。

やさしくて、がんばり屋で、ちょっと不器用な。

そんなあなたのままで、すこしずつ、重さを分ける練習をしていきましょうね。

何十年もかけて身につけた「しっかり者」ですから、ゆるめるのにも、時間がかかってあたりまえです。

それに、しっかり者のあなたは、これまでたくさんの人の荷物を持ってきたはずです。

こんどは、すこしだけ、持ってもらう番。

順番が、まわってきただけですからね。

だいじょうぶ。

ゆっくりで、いいですから。

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